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プレスリリース


2018年11月16日

一般社団法人 日本CLT協会
国立大学法人 東京農工大学
国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所

防火規制をクリアし、外壁をCLTとした中高層木造ビル実現へ!―日本初の2時間耐火のCLT外壁を開発し国交大臣認定を取得。実物件への適用が可能に―

ポイント

  • 日本初の2時間耐火構造のCLT外壁を開発し、国土交通大臣の認定を取得。
  • 物の階数による制限を受けずに、CLT構造の外壁が使用可能に。
  • 間仕切壁についても、既認定より耐火被覆の薄い2時間耐火構造を開発し、認定を取得。

概要

一般社団法人日本CLT協会(代表理事 中島浩一郎)(以下、CLT協会という)は、国立大学法人東京農工大学、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所と共同で2時間耐火性能を持つ直交集成板(CLT)部材等の開発に取り組み、CLTを使用した外壁及び間仕切壁の2時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得しました(申請者:CLT協会)。
CLT壁の表面を適切な厚みの強化せっこうボードや軽量気泡コンクリートにより被覆することで、火災が2時間継続しても内部のCLTは焦げたりせずに十分な強さを保ち続ける性能が実現しました。
これは、荷重支持部にCLTを用いた外壁の2時間耐火構造としては日本初の認定取得となります。これにより防火上は階数の制限なくCLT外壁を建築物に用いることが可能となります。間仕切壁についても、既存の認定より被覆の薄い仕様を開発し2時間耐火の認定を取得しました。これら認定部材の使用については、CLT協会が実施する講習会を受講し資格要件等を満たせば、どなたでもご使用可能となります。

背景

新しい木質建材であるCLTは、大きな面材料が得られることや強度性能などから、大規模建築物や中高層建築物の壁や床、屋根に利用できます。しかし、それには日本の厳しい防火規制をクリアする必要があり、特に中高層建築に用いるには2時間の火災に耐え、消火活動が行われなくても建物が倒壊しない性能(2時間耐火性能)が必須となります。耐火性能を付与した新たな建材については、耐火試験を実施して国土交通大臣の認定を受けることで初めて実際の建築物に使用することが可能となります。認定は、外壁、間仕切壁、床、柱、梁など、部材ごとに取得する必要があり、被覆材などの構成が変わるたびに、新たに認定を取得する必要があります。
CLT普及に向けて、必要な耐火性能を持つ様々な部材が開発されるなか、CLT構造の外壁については2時間耐火の性能を持つ認定品はこれまで無く、CLTを多く用いた中高層建築物の実現へのネックとなっていました。

内容

このほど、CLTを荷重支持部に用いた[外壁] と[間仕切壁]について指定性能評価機関において耐火試験を実施して火災安全性を確認し、2時間耐火構造の国土交通大臣認定をそれぞれ取得しました。外壁は耐水強化せっこうボード2枚(下張21 mm+上張15 mm)で被覆した上に厚さ35 mmの軽量気泡コンクリートパネル(ALC)を張ることで、間仕切壁は強化せっこうボード3枚(下張21 mm+中張21 mm+上張15 mm)で被覆することで、2時間の火災に遭っても内部のCLTは焦げたり燃焼せず健全に保たれる性能を確保しています。
CLT構造の外壁の2時間耐火認定は日本初で、間仕切については既存の認定と比べて被覆層の厚さをより薄くした仕様となっています。いずれの認定も、CLTパネルの接合方法や中空層・各種シート類の有無などに幅を持たせた、汎用性の高い仕様となっています。

 

耐火試験中の炉内の写真 試験後の様子の写真 試験後の内部CLT表面の様子

耐火試験中の炉内

2時間経過時の温度は
約1050℃に達する。

試験後の様子

炎や煙は見られず、
被覆材の脱落も無し。

試験後の内部CLT表面の様子

CLT表面に炭化は無く、十分な
強度を保持した健全な状態。


本成果の基となる技術開発は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター委託事業「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」の「CLTを使った構造物の施工コストを他工法並にする技術開発(研究代表機関:国立大学法人東京農工大学)(平成29~31年度)」の支援を受けて実施されたものです。

今後の展開

今回の認定取得により、防火上は階数の制限なくCLT構造の外壁を建築物に用いることが可能となりました。本成果とCLT協会に参画する企業の持つCLT床等の耐火構造とを組み合わせることにより、建物全体にCLTを使用した中高層建築物も実現できます。本認定の使用については、CLT協会が実施する講習会を受講し資格要件等を満たせば、どなたでもご使用可能となります。
今後、壁のバリエーションを更に増やすとともに、よりコストを抑えた仕様などの認定取得も予定しているほか、屋根、階段についても耐火部材の開発を進めていきます。また、配管の貫通部などの弱点における火災安全性を保つ方法や、耐火集成材との組合せについても検討していきます。これらの成果を使うことで中高層ビルをも含めたCLT建築物を安全・安心に、より低コストで実現することが可能となります。ひいては、国産のスギを中心とした、木材の温かみを感じられる建築物がより一層皆様の身近なものとなるとともに、国産材の需要を喚起し国内の林業の活性化へと繋げていきます。

共同研究機関

  • 研究コンソーシアム名:CLT活用施工技術開発コンソーシアム
  • 研究代表者名:服部 順昭[東京農工大学]
  • 構成員:

国立大学法人 東京農工大学 

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 

一般社団法人 日本CLT協会 

国立研究開発法人 建築研究所 

株式会社 竹中工務店 

清水建設 株式会社 

三井住友建設 株式会社 

有限会社 平子商店

国立大学法人 東京大学

学校法人立命館 立命館大学

 

【参考資料】認定内容概要

2時間耐火CLT外壁

  • 認定番号:FP120BE-0176
  • 認定取得日:2018年11月7日
  • 認定をした構造方法等の名称:軽量気泡コンクリートパネル・両面薬剤処理ボード用原紙張せっこう板重表張/強化せっこうボード3枚重・人造鉱物繊維断熱材裏張/直交集成板造外壁
  • 認定をした構造方法等の内容の概略
    荷重支持部:厚さ90 mm以上、幅900 mm以上の3層3プライ以上のCLT(CLTの接合方法:突付、ハーフラップ、スプライン(片側、両側)、雇い実)
    外装材:軽量気泡コンクリートパネル 厚さ35~50 mm+耐水強化せっこうボード21 mm+15 mm以上(下張、上張)
    胴縁またはスペーサー:なし、あり(厚さ3 mm以上、幅27 mm以上、間隔500 mm以下)
    内装材:強化せっこうボードGB-F(V)21 mm+21 mm+21 mm以上(下張、中張、上張)
    内張り断熱材:グラスウール(32 k以下)厚さ25 mm
    防水紙、気密シート、気密テープ、目地処理:いずれも無し、ありの両仕様を含む
    被覆材の留付:[外装材]ネジ、[外装上張]ネジ、[外装下張]くぎ・ネジ、[内装上・中張り]ボンド+ステープル、[内装下張]くぎ、ネジ

2時間耐火CLT間仕切壁 ]

  • 認定番号:FP120BP-0082
  • 認定取得日:2018年8月20日
  • 認定をした構造方法等の名称:両面強化せっこうボード3枚重張/直交集成板造間仕切壁
  • 認定をした構造方法等の内容の概略
    荷重支持部:厚さ90 mm以上、幅900 mm以上の3層3プライ以上のCLT(CLTの接合方法:突付、ハーフラップ、スプライン(片側、両側)、雇い実)
    被覆材:強化せっこうボードGB-F(V)21 mm+21 mm+15 mm以上(下張、中張、上張)
    胴縁:なし、あり(断面12×30 mm以上、間隔500 mm以下)
    気密フィルム、気密テープ、目地処理:いずれも、なし、ありの両仕様を含む
    被覆材の留付:[下張]くぎ、ネジ、[中・上張]ボンド+ステープル

 

お問い合わせ先

一般社団法人 日本CLT協会
担当者:森田 聖、廣瀬 貴大
TEL:03-5825-4774 FAX:03-5825-4775
e-mail:info@clta.jp

国立大学法人 東京農工大学
研究担当者:農学部・農学府 特任教授 服部 順昭
広報担当者:総務部総務課 広報連携室
TEL:042-367-5895 FAX:042-367-5553
e-mail:koho2@cc.tuat.ac.jp

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究担当者:木材改質研究領域 チーム長 上川 大輔
広報担当者:企画部広報普及科 広報係
Tel:029-829-8372 FAX:029-873-0844
e-mail:kouho@ffpri.affrc.go.jp


 

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お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科広報係

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

電話番号:029-829-8372

FAX番号:029-873-0844

Email:kouho@ffpri.affrc.go.jp