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プレスリリース

2021年10月28日

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所

土砂災害が発生する危険性の高い雨の降り方を判定する

ポイント

  • 雨の降り方と土砂災害が発生したタイミングの関係を明らかにしました。
  • 1時間当たりの平均雨量がおよそ100年に一度の値に達した際に、土砂災害が発生する危険性が高いことがわかりました。
  • この成果は、土砂災害が発生する危険性が高い雨の降り方の判定に役立つことから、住民の安全な避難計画の策定に貢献することが期待されます。

概要

国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所は、土砂災害が発生する危険性が高い豪雨の特徴を明らかにしました。
大規模な土砂災害を引き起こした豪雨を対象として、1時間当たりの平均雨量と災害が発生したタイミングの関係を調べました。その結果、平均雨量が100年に一度の確率の値に達した際に、土砂災害が発生する危険性が高いことがわかりました。つまり、平均雨量が100年に一度の値に達するかどうかを推定することで、土砂災害の発生する危険性が高い雨の降り方かどうかを判定できます。この成果は、豪雨時の住民の安全な避難計画の策定に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2021年9月13日にEarth Surface Processes and Landforms誌でオンライン公開されました。

背景

近年、豪雨に伴って各地の山地斜面で土砂災害が発生しており、このような災害に対する防災・減災技術の開発が急務となっています。災害の軽減には警戒や避難が有効であるため、降雨データを用いて、土砂災害が発生する危険性をどのように判定するのかが重要です。しかしながら、土砂災害はさまざまな雨の降り方で発生するため、土砂災害の発生する危険性を判定する上で、どのような雨の情報が役立つかは詳しくわかっていませんでした。

内容

平成24年7月九州北部豪雨や平成30年7月豪雨など合計10事例を対象として、大規模な土砂災害を引き起こした雨の降り方について調べました。例えば、平成24年7月九州北部豪雨では1時間雨量や3時間雨量、6時間雨量*1、災害発生前にすでに100年に一度の雨量*2達しており、直接災害の引き金となったのかどうかは不明確でした(図1)。一方で、12時間雨量が100年に一度の値に達したタイミングは、土砂災害の発生時刻とほぼ合致しており、災害の原因となったと考えられました(図1)。このように、土砂災害の発生危険性を判定するためには、1~6時間雨量のような短期間の雨量だけでなく、12時間を超えるような比較的長期間の雨の降り方も考慮する必要があります。
そこで、1時間から72時間まで経過する時間を変えながら、各時間で100年に一度の確率の値に相当する1時間あたりの平均雨量を求めて、土砂災害を引き起こした降雨と比較しました(図2)。その結果、調べた全ての事例で共通して、1時間当たりの平均雨量が、その地域における100年に一度の値に達した際に、土砂災害が発生する危険性が高いことが分かりました(図3)。
この成果は、土砂災害が発生する危険性が高い雨の降り方の判定に役立つことから、住民の安全な避難計画の策定に貢献することが期待されます。

 

図1.平成24年7月九州北部豪雨を例に、1時間から72時間の各時間雨量と土砂災害発生のタイミングを表したグラフ

図1. 各時間雨量と⼟砂災害の発生タイミングの関係の例
1時間雨量から72時間雨量までの各時間雨量と⼟砂災害の発生タイミングの関係を調べました。
横軸は、最下段の図のように、72時間雨量が最大値に達した時刻から遡って3日間(72時間)の期間を示しています。最上段から3段目までの図のように、平成24年7月九州北部豪雨では、⼟砂災害の発生する前に1時間雨量や3時間雨量、6時間雨量が100年に⼀度の確率の値に到達していました。それに対し、上から4段目の図のように、12時間雨量100年に⼀度の値に達したタイミングで、土砂災害が発⽣していました。そして、最下段の図のように、より長い時間を考慮した72時間雨量は、100年に⼀度の値には達していませんでした。このように、何時間の雨量が100年に⼀度の値に達した際に、⼟砂災害が発生するのかは、調べた事例ごとに異なりました。

 

図2.横軸を経過した時間、縦軸を1時間当たりの平均雨量とした、両対数軸のグラフ

図2. 1時間から72時間までの100年に⼀度の確率の1時間当たりの平均雨量の求め⽅
まず図1の赤字で示したように、100年に⼀度の各時間雨量を、1時間当たりの平均雨量に換算します。例えば、図1の最下段のように、100年に⼀度の確率で発生する72時間雨量が約860mmである場合、72時間経過した時点で1時間当たりの平均雨量が約12mm/hを超えていれば、その降雨は100年に⼀度の雨量に達したと⾔えます。このようにして、各時間雨量の100年に⼀度の値を、図2のように、両対数軸のグラフ上で、横軸を経過した時間、縦軸を1時間当たりの平均雨量として示すと、赤線で示されたほぼ直線の関係になることが知られています。この100年に⼀度の確率の雨量を示す赤線と、実際の豪雨の1時間当たりの平均雨量の変化を示す水色線の関係を調べました。

 

図3.大規模な土砂災害を引き起こした10事例の1時間あたりの平均雨量の変化と斜面災害が発生するタイミングを示したグラフ

図3. 1時間当たりの平均雨量の変化と⼟砂災害の発⽣タイミングの関係
調査した事例ではいずれも、1時間当たりの平均雨量を示す水色線が、その地域における100年に⼀度の確率で発⽣する雨量を示す赤線と交差する周辺で、土砂災害が発生していたことがわかりました。つまり、1時間当たりの平均雨量が100年に⼀度の値に達する前後の時刻で、土砂災害が発生する危険性が高まります。事例間で比較するために、図1と同様に、横軸は72時間雨量が最大値に達した時刻から遡って3日間(72時間)の期間を示しています。そのため、平成25年台風第26号や平成28年8月北海道豪雨のように、この期間の初期の降雨量がゼロであった場合には、平均雨量を示す水色線は横軸の途中から始まります。

今後の展開

本研究により、大規模な土砂災害を引き起こす危険性が高い雨の降り方が明らかになりました。一方で、雨量計の観測網でカバーされていない地域における局所的な豪雨は、正確な降雨量の測定が困難です。そのため、山間部においてゲリラ豪雨で発生するような、局所的で小規模な土砂災害の発生タイミングと雨の特徴の関係は明らかになっていません。今後は、レーダー雨量などを用いることで、局所的な豪雨も比較対象に加えながら、雨が何年に一度の確率の平均雨量に達するのかという情報が、どのような規模の土砂災害の発生危険性の判定に有効なのか、詳しく調べていく必要があります。

論文

タイトル:Comparison of the return period for landslide-triggering rainfall events in Japan based on standardization of the rainfall period

著者:Haruka Tsunetaka

掲載誌:Earth Surface Processes and Landforms(2021年9⽉13⽇オンライン公開)

論⽂URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/esp.5228

研究費:環境再生保全機構環境研究総合推進費「気候変動影響予測・適応評価の総合的研究」

用語解説

*1 〇時間雨量
〇時間に降った雨の総量を指します。例えば、6時間雨量の場合、ある時刻から遡って6時間の間に降った雨の総量を意味します。(元に戻る

*2 100年に一度の雨量
気象庁のアメダス雨量計で観測された雨量計設置年(地域毎に多少前後しますがおよそ1976年)から2019年までの降雨データを用いて算出した、100年に一度の確率で発生する雨量を指します。本研究では、1~72時間雨量について、100年に一度の確率で発生する値を求めました。(元に戻る

 

 

お問い合わせ

研究担当者:
森林総合研究所 森林防災研究領域 治⼭研究室 研究員 經隆 悠

広報担当者:
森林総合研究所 企画部広報普及科広報係
Tel: 029-829-8372
E-mail: kouho@ffpri.affrc.go.jp


 

 

 

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所属課室:企画部広報普及科

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

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FAX番号:029-873-0844