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更新日:2012年8月24日

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木の香りによる快適性増進ならびにダニの行動抑制効果

研究問題名: VIII.生物機能及び遺伝資源特性の解明と新利用技術の開発

生物機能開発部 生物活性物質研究室 宮崎 良文・大平 辰朗・松井 直之
木材利用部 木質環境研究室 森川 岳・恒次 祐子
木材利用部 集成加工研究室 平松 靖

背景と目的

木の香りは人に快適感を与えることが知られている。また,コンクリート住宅に比べ,木造住宅にはアレルギーの主原因である屋内塵性ダニ類が少ないと言われている。本研究の目的は,経験的に知られているこれらの現象を“木の香り”を切り口として定量的に明らかにし,生活環境中での木の香りの積極的な利用を目指すことにある。

成果

快適性増進効果の評価には,新規開発した快適性評価システム(写真1)を用いた。本システムは,脳活動(近赤外線分光分析法による脳血液動態)と自律神経活動(血圧・脈拍,左手中指)の毎秒測定を指標として人の快適性を評価するものである。スギチップから発散された香り物質を吸入することによって,脳活動が有意に鎮静化することが分かった。収縮期(最高)血圧においても,同様に,有意な低下が認められ,生体がリラックスしていることが明らかとなった(図1)。さらに,畳中に木材の薄板(約2mm)を挿入し,その上に代表的な屋内塵性ダニであるヤケヒョウヒダニ(写真2)を封じ込めた曝露容器を設置した。ダニは,板に直接触れることなく,その香り物質の曝露を受けた。その結果,図2に示すようにヒノキ,ヒバ薄板において,4日目以降,80%以上の顕著なダニの行動抑制効果が認められた。その効果は,その後,8ヵ月間継続することが分かった。スギ薄板においても,5日目において,有意な効果が認められた。結論として,木の香りは,人をリラックスさせ,ダニの行動を抑制することが分かった。人とヤケヒョウヒダニの居住・生息空間は極めて密接しているため,人にはリラックス効果をもたらし,ダニの行動・繁殖には抑制効果を持つ木の香りの最適な濃度環境の創出が求められている。本研究において,木材そのものから発散される香り物質によって,人は鎮静化し,ダニの行動は抑制されることが明らかとなり,生活空間における新たな木の香りの利用法に道が開かれた。なお,本研究は農林水産技術会議大型別枠研究「新需要創出のための生物機能の開発・利用技術の開発に関する総合研究」による。

木の香り物質は人をリラックスさせダニの行動を抑制する

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