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更新日:2012年8月24日

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平成12年度 研究成果選集 2000

森林生態系の特性解明と森林の環境形成・保全機能の増進

森林土壌の発達に伴って炭素貯留機能はどう変わるか?

火砕流や泥流により発生した裸地上で,土壌の発達に伴って土壌中に有機物がどのくらいの速さで蓄積されているかを検討し, 1,000年弱の時間経過では表層部への蓄積は進むが下層には及ばないことが明らかになった。

情報通信技術(IT)を用いた地すべり総合管理手法の開発

森林生態系におけるCO2動態の解明に重要な林床面CO2放出量評価のため、落葉広葉樹林内において自動開閉型チャンバを用いた長期連続測定を行い、林床面CO2放出量と環境因子との関係を明らかにした。

広域の気候に対する森林影響の評価

森林が広域の気候に及ぼす影響を解明するために,地域規模の気候を再現する数値モデル(局地循環モデル)を用いて,森林による蒸散活動の強弱が広域の気温形成に及ぼす影響を明らかにした。

森林資源の充実と林業における生産性の向上

樹木ファイトプラズマ病の遺伝子診断法の開発

ファイトプラズマの検出と識別による遺伝子診断法を開発し,この方法を使ってホルトノキの衰弱枯死被害が新しい樹木ファイトプラズマの病であることおよびナツメてんぐ巣病がヒシモンヨコバイにより媒介されることを明らかにした。

インドネシアのカミキリムシ類の目録作成

インドネシアの熱帯降雨林にある約1,000haの調査地では,わずか2年間の調査で日本全土の種数に 匹敵する700種以上のカミキリムシが記録され,生物多様性の豊穣を裏付けた。また大規模な森林火災がカミキリムシに与える影響も初めて定量的に明らかとなった。

路網整備による交通利便性の向上

路網整備によってこれまでの移動距離を短縮する経路ができると,交通利便性は高くなる。路網内に おける移動では,整備が進むにつれ交通利便性が高くなったが,路網内と外との移動では,路網整備と交通利便性の間に相関は認められなかった。

木質系資源の有効利用技術の向上と新用途開発

樹皮タンニンの機能解明と用途開発

工場残廃材である樹皮の有効利用を図るため,樹皮に多量に含まれている縮合型タンニンの含有量,化学構造,ホルムアルデヒド吸着能,繊維素材への染色性を明らかにするとともに,抗菌繊維及び液 状炭化物の調製法を開発した。

単板積層材(LVL)の耐火性能

単板積層材(LVL:Laminated Veneer Lumber)は厚さ3mm前後の単板を接着した構造材料である。これらの大規模木質建築物への利用には火災安全性が問われるため,接合部を含めて耐火性能を検証し安全であること確認した。

関東地方の遺跡出土材の識別による木材利用史の解明

関東地方の遺跡から出土した木材の樹種を識別し,過去の木材利用の実態を解明した。縄文時代以降,各時代の文化的および社会的な条件を反映して,時代ごとに特徴的な樹種選択が行われてことが,明らかになった。

森林生物機能の開発と利用による技術革新

木の香りによる快適性増進ならびにダニの行動抑制効果

木の香りによる快適性増進ならびにダニの行動抑制効果を調べた。その結果,木の香りは血圧を有意に低下させ人をリラックスさせること,ならびにダニの行動を有意に抑制することが分かった。

人の官能評価と機器分析で高嗜好性シイタケを作る

乾シイタケの「におい」を消費者の嗜好に合致するさせるため,官能評価と機器分析の結果を基に「におい成分」の含有量を調節する方法を開発した。その結果,消費者の嗜好に合わせた乾シイタケを作出できることが明らかとなった。

地域に根ざした林業の発展と森林の多目的利用技術の高度化

猿ヶ森ヒバ埋没林の形成における人為的影響

下北半島北東部の青森県下北郡東通村にあるヒバ埋没林の成因を明らかにした。約1,000〜850年前, 約500年前,現代の年代を示すヒバ埋没林は,製鉄などの人為攪乱で生じた砂丘砂の移動によって形成された。

ツキノワグマの頭骨変異にみられた生息地分断化の影響

ツキノワグマの頭骨変異の解析により,移動性の高い大型哺乳類であっても生息地の分断化が大きな影響を与えること,頭骨の標準的測定部位の計測という簡便な手法により集団間の遺伝的交流の実態把握が可能であることを明らかにした。

鳥が虫を食べることで樹木の成長は促進されるか

鳥が利用できないように網掛けした樹木では,食葉性昆虫の数と葉の被食量が増え,翌年の葉とシュートの長さが短かくなることが確認され,鳥による昆虫の捕食が樹木の枝葉の成長に及ぼす効果が明らかになった。

Global Positioning System (GPS)と地理情報システム(Geographic Information System, GIS)で巨木を調査し,管理する

近年GPSの性能が向上し,山岳域森林内でも利用できるようになってきた。天然生大径木である魚梁瀬スギの立木個体管理にGPSを利用し,諸データをGISで統合した立木個体管理システムを開発した。

菌根性食用きのこショウロの共生栽培に向けた感染苗作成技術の開発

菌根性食用きのこショウロを林地で共生栽培するために,クロマツ当年生実生に人工接種を行う簡便で低コストな手法を開発した。腐敗子実体由来の胞子懸濁液とアルギン酸ナトリウムゲルによる胞子の根の表面への保持で,接種成績が改善された。

雲仙普賢岳周辺斜面における噴火堆積物表層の微細構造と浸透特性

雲仙普賢岳の噴火活動が終息して1〜3年が経過した噴火堆積物表層の微細構造の解析および飽和透水試験を実施し,噴火活動の影響を受けた雲仙普賢岳周辺斜面表層の浸透能が回復傾向にあることを明らかにした。

国際研究の推進と地球環境問題への貢献

純一次生産力の全球分布の実態を見る

植生が吸収する日射量と成長量の関係に基づいて,人工衛星データと気象データから純一次生産力の全球分布をマッピングした。高緯度ほど年間の生産力は低いが,夏の中高緯度で月間の生産力が最大になることが明らかとなった。

東南アジアの森林火災早期発見と危険度評価システムの開発

大規模森林火災による被害の軽減を目的として,ネットワークを利用して現地の衛星データを入手し,森林火災の警戒情報と発生情報をリアルタイムで提供する実用システムを開発した。

環境インパクトの少ない木材搬出手法の開発

マレーシアの熱帯丘陵林択伐現場ではブルドーザ集材が行われているが,林地の撹乱が著しいため, 撹乱低減を目的としてタワーヤーダの導入を行っている。集材跡地の撹乱面積を比較したところ,タ ワーヤーダ集材はブルドーザ集材よりも小さかった。

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