研究紹介 > 刊行物 > 研究成果選集 > 平成12年度 研究成果選集 2000 > 東南アジアの森林火災早期発見と危険度評価システムの開発
更新日:2012年8月24日
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研究問題名: XV.海外における森林特性の解明及び環境保全技術,持続的利用技術の開発
企画調整部 | 海外森林環境変動研究チーム | 沢田 治雄 |
林業経営部 | 遠隔探査研究室 | 齋藤 英樹 |
科学技術振興事業団 | 澤田 義人・ 新村 太郎・永谷 泉 |
アジア東部地域では大規模な森林火災がたびたび発生している。大きな原因はエルニーニョによる異常乾燥と急激な森林開発だと考えられ,被災面積も数年ごとに著しく増加している。このような大規模森林火災の早期発見・警戒のために個別に処理システムを開発するのでは無駄が多くなる。そこで,大容量ネットワークを利用して衛星データを受信局からリアルタイムで入手し,高速演算処理を施して火災関連情報を抽出するとともに,関係機関に情報を自動配信する一連のシステム開発研究を行った。
気象衛星NOAAと米国軍事気象衛星DMSPのデータ(図1)を用いて森林火災早期発見システムと森林火災危険度評価システムを開発した。NOAA衛星のデータとしては塩釜,横浜,石垣にある水産庁受信局のデータと,タイのアジア工科大学で受信した東南アジアのデータを収集している。いずれもリアルタイム受信を行い,農林水産研究計算センターの衛星情報システム(SIDaB)を利用して,地理補正等の自動処理を施し,アジア・太平洋地域のNOAAデータのリアルタイム処理を実現させている。DMSPデータは,米軍以外でも3時間後には利用できるようになり,準リアルタイムで受け取れるようになった。そのデータを高速座標変換で重ね合わせ,夜の光の合成画像を作成する自動処理を実現した。森林火災の早期発見システムでは,NOAAとDMSPデータ及び地理情報を併用して,火災を準リアルタイムで発見するとともに,関係者には特定地域の火災発生情報(位置の座標)を電子メールによって自動配信している。また,web上に画像としても提供している(図2)。
森林火災危険度評価システムでは,NOAAの時系列データを分析するフィルタリング法(LMF)を開発し,雲の影響がほとんどない10日間合成データなどを作成し,植生の季節変化を確認できるようにした(図3)。これをもとに,森林の季節変化状況を分析し,植生の落葉情報から1km2ごとに延焼危険度を評価している。また,フィルタリング処理を施したデータから得られる季節変化の様子を平年と比較して,植生状況の特異性を把握することができる。例えば,LMF処理によって得られた1995年〜1999年の5年間の平均季節変化パターンと,激しいエルニーニョ現象が起こって乾燥がすすんだ1997年〜1998年の季節変化パターンを比較すると,1997年は異常気象が世界のあちこちでみられたことなどがわかる(図4)。
なお,本研究は科学振興事業団,計算科学技術活用型特定研究開発推進事業「アジア太平洋森林災害アプリケーションの開発」による。
図1 夜の光を捕らえる米国軍事衛星 DMSP
図2 NOAAとDMSPによる森林火災発見
(赤い+字はNOAA,紫の箇所はDMSPで検知)
図3 時系列フィルタMFによる雲の影響の無い10日間ごとの植生指数画像
図4 植生状況から見た1997年11月上旬の世界の異常性
(注:植生の緑が赤い箇所では平均よりも少なく,青い箇所では平均よりも多い)
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