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更新日:2012年8月24日

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環境インパクトの少ない木材搬出手法の開発

研究問題名: XV.海外における森林特性の解明及び環境保全技術,持続的利用技術の開発

生産技術部 造林機械研究室 山田 健
国際農林水産業研究センター 林業部 佐々木 尚三

背景と目的

マレーシアの熱帯丘陵林では天然林択伐作業が行われており,主にブルドーザとフォワーダにより集材されている(図1,2)。材のサイズが大きいためブルドーザも大型のものが使用されており,またブルドーザの林内進入距離が長いために撹乱面積が大きく,後継樹,林床植生の損傷,それに伴う土壌の裸出,表土の撹乱が著しい。持続的林業経営のために,これら集材時の環境インパクトを抑える必要がある。そこでタワーヤーダを導入して,熱帯林における安全,高能率で環境インパクトの少ない集材作業の確立を目指している(図3)。

成果

タワーヤーダを導入した試験地は,トレンガヌ州ジェンガイ・フォレストリザーブの天然林択伐現場である。従来よりブルドーザにより地曳き集材を行い,さらにそれを最終土場までフォワーダにより集材する二段集材を行っている。現場は比較的急傾斜地であり,事前に行った土壌調査によれば有機質を含む土壌層は非常に薄く,心土は崩壊しやすい。ここに試験区を設け,タワーヤーダ集材を行った。

使用したタワーヤーダは熱帯林用に製作されたもので,材の重量が最大で5t程度と想定されるため,直引力6t,最大スパン500m,横取り距離50m,白重約30tと日本国内では例を見ないような大型機である。現地の林道が尾根林道であるため,タワーヤーダ,先柱とも尾根上の林道沿いに設置し,谷越えで集材を行った。索張り方式はエンドレスタイラー方式に類似したもので,半固定式のスカイラインで材重量を支え,インターロックされたメインラインとホールバックラインで搬器を移動し,リフティングラインで材を吊上げるものである。実際に作業を行ったところ,索張りが完了すれば高能率に集材できることがわかったが,現時点では架設撤去に多大の時間がかかり,この短縮が今後の課題となっている。

タワーヤーダ集材跡地の撹乱面積を測量し,ブルドーザ集材跡地と比較した(図4,表1)。また,撹乱を受けた土壌のサンプルを採取し,理学性を測定した(図5)。調査の結果,タワーヤーダ集材跡地の土壌撹乱面積割合はブルドーザ集材跡地の1/10程度であり,撹乱部分の土壌の絶乾密度はブルドーザ集材跡地の幹線集材路と支線集材路の中間程度であることが判明した。従って,タワーヤーダ集材はブルドーザ集材と比較して,林地の撹乱が少ないということができる。

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図1 ブルドーザー集材

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図2 フォワーダ集材

p43 fig3

図3 タワーヤーダ

p43 fig4

図4 タワーヤーダ集材跡地の撹乱面

表1 土壌撹乱面積割合(%)
ブルドーザ集材 17.4
タワーヤーダ集材1 1.6
タワーヤーダ集材2 1.4
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図5 撹乱土壌の密度

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