研究紹介 > 研究組織 > 戦略研究部門 > 森林災害・被害研究拠点 > 平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震によって発生した山地災害(調査速報)
更新日:2008年6月24日
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独立行政法人森林総合研究所
平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震により、震央周辺の栗駒山の東麓から磐井川流域にかけて地すべりや斜面崩壊等の山地災害が多数発生しています。
森林総合研究所では林野庁からの災害調査要請を受け、6月14日から16日にかけて職員2名を派遣し、ヘリコプターからの空中踏査による緊急現地調査をおこないました。
本見解は6月20日の段階のものであり、今後調査の進み具合により変わる可能性があることをご承知置き下さい。
平成20年6月14日~16日(3日間)
図-1 調査区域
調査地域の地質は、火山性の砕屑物が厚く堆積した脆弱な地質条件にある。これを反映して過去に発生した地すべりにより形成された地形が多く見られる。
調査地内では、中・小規模の斜面崩壊が多発したほか、変動域が100haにおよぶような大規模地すべりも発生した。一方、地震発生前の降雨が比較的少なかったためと思われるが、土石流の発生箇所は限られていた。しかし、積雪の残る高標高地域では多量の融雪水が斜面に供給されていたと思われ、東栗駒山の東斜面では発生した崩壊が流動化して約4km流下し、駒の湯温泉に達し大きな被害を生じている。
このように本地震による山地災害では、多数の表層崩壊に加え、大規模地すべりや土石流等が発生した。以下に各調査区域(図-1参照)ごとに山地災害の特徴を報告する。
花山湖上流では、大小様々の崩壊群が発生している。崩壊群は、花山地区を中心とした地域(写真-1)と、湯ノ倉・温湯温泉付近を中心とした一迫川最上流部の地域(写真-2)の、2地域に大別される。一迫川最上流部では大小多数の崩壊群が発生している。また、上流部の谷壁急斜面から発生した崩壊が河道を閉塞している(写真-3)。
写真-1 急勾配斜面における崩壊群(花山湖上流)
写真-2 多数の斜面崩壊(花山湖上流)
写真-3 斜面崩壊と河川閉塞(花山湖上流)
荒砥沢ダム上流側の山腹斜面において約100haの大規模な地すべりが発生した。地すべり土塊の大部分は対岸で停止したが、一部はダム湛水池内に流入している(写真-4、5)。
写真-4 大規模地すべり(荒砥沢ダム)
写真-5 大規模地すべり(荒砥沢ダム)
東栗駒山の東斜面で崩壊が発生した(写真-6)。崩壊土砂は流動化してドゾウ沢に沿って約4km流下し、駒の湯温泉まで達した(写真-7)。同様の稜線部で発生した崩壊が笊森の南東斜面にも見られるが、東栗駒山東斜面ほどの著しい流動化と長距離流下は認められない。
写真-6 土石流源頭部(ドゾウ沢)
写真-7 土石流流下部(駒ノ湯温泉)
広い範囲に大小さまざまな崩壊が認められる。(写真-8)
写真-8 斜面崩壊群(耕英地区)
磐井川沿いの渓岸斜面に多数の崩壊が認められる。規模は大きくないが、地すべり性の崩壊も多く認められる。
磐井川上流には多数の崩壊地が認められる(写真-9)。一迫川最上流部の崩壊群と比べて面積は小さいが、深い渓谷の急斜面で発生したものが多く、その一部は河川を閉塞している。(写真-10)
写真-9 多数の斜面崩壊(磐井川地区最上流部)
写真-10 渓岸の斜面崩壊と河道閉塞(磐井川地区最上流部)
栗駒山と焼石岳の間に位置する脊梁山地の急斜面に多数の崩壊が認められる。形態としては浅い表層崩壊が多くを占めている。
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