研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2024年紹介分 > 広葉樹10種の落葉と枯死木の朽ちる速さに相関なし
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掲載日:2024年3月19日
日本の温帯林でよく見られる落葉広葉樹の落葉と枯死木それぞれが朽ちていく分解速度を調べたところ、両者に相関関係が特にないことが分かりました。炭素貯蔵庫である樹木の遺体に対し、気候変動に伴う樹種構成の変化がどのような影響を与えるのかを予測する上で、落ち葉と枯死木それぞれを個別に考慮する重要性を示す成果です。
落葉広葉樹10種の分解速度について、小川試験地(茨城県)で落葉と枯死木を対象に野外条件下での調査を行いました(写真)。加えて、同試験地で収集した落葉と伐採した木材を実験室に持ち込んで、リター分解菌を用いた検証も行いました。その結果、いずれの検証でも、落葉の分解が速い樹種は枯死木(木材)の分解も速いなどといった相関関係は確認されませんでした(図)。
小川試験地内の検証10種比較の中で、例えばミズキは落葉が最も速く分解しましたが、その枯死木の分解はクリに次いで2番目に遅くなっていました。一方、イヌブナは落葉の分解に最も時間がかかりましたが、その枯死木の分解は3番目の速さでした。
(本研究は、2023年12月にOikosでオンライン公開されました。)
写真:落葉と枯死木の分解速度について両者の関係を検証した小川試験地(茨城県)の落葉広葉樹林。
図:野外条件下(左)および実験室条件下での木材腐朽菌(中)、落葉分解菌(右)による落葉と枯死木(木材)の分解速度の関係を調べた結果、いずれの条件下でも両者の間に相関はなかった(論文中の図を基に作成)。分解速度定数は年あたりの分解の程度を表す係数であり、分解率は実験期間中に分解により減少した重量割合である。どちらの指標も値が大きいほど分解が速く進んだことを示している。
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