研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2024年紹介分 > シカは餌植物からナトリウムを十分に得られず、特に雌ジカで強く欠乏する
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掲載日:2024年4月11日
シカが餌植物からナトリウムをはじめとしたミネラルを十分に得ているのかを試算したところ、特に雌ジカでナトリウムが強く欠乏していることがわかりました。雌ジカを選択的に誘引・捕獲し、効果的にシカ個体群を減少させる技術(塩水による雌ジカ誘引等)の開発に繋がる発見です。
全世界の植物の形質を登録したデータベースTRY(Kattge ら 2020)から、シカが餌として利用する植物を抽出し、それらの植物の葉のミネラル含有率とシカの1日の採食量(4パターン:乾燥重量0.5kg、1.5kg、3kg、4.5kg)を掛け合わせることによって餌植物を介した1日あたりのミネラル摂取量を植物種毎に計算しました。この値をシカの体重(4パターン:30kg、60kg、90kg、120kg)と1日の採食量から計算した1日あたりのミネラル必要量と比較するとともに、必要量を満たす(摂取量が必要量を上回る)植物種の数の比率を雌ジカと雄ジカで比較しました(図1)。
ナトリウム必要量を満たす植物の割合は、シカの採食量や体重に関わらず低く、特に雌ジカではナトリウム欠乏が強いという試算結果になりました(図2A)。カルシウム必要量を満たす植物の割合は比較的高かったものの、餌植物の量が少ない場合には、特に雄ジカで不足する可能性が示されました(図2B)。また、マグネシウムは餌植物から十分に摂取されていました。
(本研究は、Animalsにおいて2023年3月13日、にオンライン公開されました。)
図1:シカのミネラル摂取量と必要量を比較する方法
シカが餌として利用する植物は、高橋ら(2014)が取りまとめた植物リストを用いた。ミネラル必要量は、National Research Council(2007)によって提案された計算式によって計算した。
図2:シカの(A)ナトリウムおよび(B)カルシウム必要量を満たす植物種の割合
シカの体重4パターン(30kg、60kg、90kg、120kg)と1日の採食量4パターン(乾燥重量0.5kg、1.5kg、3kg、4.5kg)、合計16パターンの条件下で試算した結果のうち6つを抜粋。
各グラフは、シカの餌植物のうちミネラル濃度データを入手できた植物約200種(ナトリウム全187種、カルシウム全191種)について、シカが当該植物1種類のみを採食するものと仮定して計算した1日あたりのシカのミネラル摂取量を植物種毎に計算し、それをヒストグラムにまとめたものを示している。各グラフ上のパーセンテージは、全植物種のうちシカのミネラル必要量を満たす植物の割合を雄ジカ(青字)および雌ジカ(赤字)について示している。青の点線および赤の実線は、雄ジカおよび雌ジカの1日あたりのミネラル必要量を示している。シカがどの植物をどのような割合で採食するかに関する詳細なデータが不足しているため、本研究ではこのようなアプローチを採用した。
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