研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2024年紹介分 > 野谷荘司山の大規模雪崩、流下を妨げた森林
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掲載日:2024年6月14日
2021年1月に野谷荘司山の岐阜県側において、日本で調査された雪崩では過去2番目に大きな規模の表層雪崩が発生しました*)。この雪崩は図に示すように斜面の2箇所で発生し、後から発生した雪崩Nの方がより高速で下流域のスギ林に流れ込み、多数のスギ立木を倒壊しながら速度を落として停止したことがわかりました。現地調査とそれだけではわからない雪崩の流下や森林の減勢効果をコンピューターのシミュレーションによって明らかにした成果で、森林を考慮した雪崩ハザードマップの作成や雪崩災害を軽減する効果の高い森林づくりに役立ちます。
研究グループは、堆積した雪が融けて、倒壊して雪崩に埋まっていた樹木が現れた4月になってその状況を詳しく調査しました。雪崩で倒壊した森林を調査する機会は極めて少なく貴重です。そのデータをもとに雪崩がどこで発生し、どこを通ってどこまで到達したかをコンピューターのシミュレーションで再現しました。その結果、雪崩はスギ林によって進行が妨げられ、もしスギ林がなければ雪崩はさらに30~270m遠くまで達し、被災範囲が広がっていたと推定されました。
*)2021年野谷荘司山雪崩:1月10日に山頂に近い稜線直下の標高1700m付近で発生し、水平距離で約2800m、標高差約1000mを流下して標高約710~720mまで達しました。人的被害はありませんが、道路周辺の構造物、電柱、多数の樹木が損壊しました。
(本研究は、Arctic, Antarctic, and Alpine Researchにおいて2024年3月に公開されました。)
図:雪崩の発生区と堆積区の地形図。
赤丸は雪崩の到達範囲、緑の網掛け部分はスギ林。(論文の図1を一部変更しました)
写真:雪崩の発生区と雪崩で倒れたスギ林。
雪崩は赤い矢印付近の2箇所で発生し、約2800mの距離を流れ下りました(論文の図3を転載しました)。
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