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森林空間を利用した生活習慣改善で気分の改善効果が持続

掲載日:2024年7月5日

森林空間を活用したヘルスツアーを行い、参加者の生活習慣の改善を促すことで、森林体験による気分の改善効果が持続する可能性のあることが分かりました。

「森林サービス産業(健康経営分野)」モデル地域に選ばれた静岡県富士宮市猪之頭区において、2021年12月に生活習慣の改善を目的とした1泊2日のヘルスツアーを実施しました。参加者は、ツアー前に、(1)心身の状態、(2)睡眠、(3)幸福感、(4)労働意欲の各項目をスマートウォッチとスマートフォンにて測定しました。その後、参加者はツアーにてサイクリング、森林浴、マインドフルネス、アロマウォーター制作等の体験プログラム(写真)や、健康セミナー、生活習慣の改善計画づくり教室等を受講し、さらにツアー中・直後に数回(1)~(4)の測定を行いました。

ツアー直後とツアー前の各項目の測定値を比較したところ、ツアー直後に、(1)心身の状態、(2)睡眠、(3)幸福感に顕著な改善がみられました。そこでツアー後2ヶ月の間、参加者に各項目の継続的な測定を依頼し、ツアー前の値と比較したところ、(1)に関した複数の気分指標にて、ツアーから1ヶ月*が経過しても、ネガティブな気分の改善効果が持続していました(図)。

その理由を調べるためアンケートを実施したところ、気分の改善効果の持続が顕著だった参加者は、ツアー中の体験や学習の記憶が動機付けとなって、ツアー後に生活習慣が改善したグループであることが分かりました。

*このうち、“緊張・不安”ではツアー2ヶ月後においても改善効果が持続していました。

本研究は、日本森林学会誌において2024年2月に公開されました。)

写真:富士山麓の森林空間を活用したプログラム
写真:富士山麓の森林空間を活用したプログラムを体験:ツアー参加者は、電動アシスト付きスポーツ自転車、里山テントサウナ、マインドフルネス、森林浴、たき火、御来光、アロマウォータ―作成、健康セミナー等のプログラムを体験した。

図:心理的な改善効果が持続した例
図:心理的な改善効果が持続した例(POMS2による気分状態の変化):怒り・敵意、混乱、疲労感、緊張・不安の気分がツアー直後に有意に改善し、行動変容に繋がる働きかけを行うことで効果が1ヶ月後においても継続した。

  • 論文名
    地域の森林空間を活用したヘルスツアーが心身の健康・満足感等にあたえる効果とその持続性 ―「森林サービス産業」モデル地域・富士宮市猪之頭区調査結果(2021年度)より―
  • 著者名(所属)
    高山 範理(森林管理研究領域)、木俣 知大(東京学芸大Explayground推進機構)、落合 博子(東京医療センター)、木村 理砂(Momo 統合医療研究所)、酒井 健一(カシオ計算機)、天野 亮(フリーランス)
  • 掲載誌
    日本森林学会誌、106(2):13-24、日本森林学会、2024年2月 DOI:10.4005/jjfs.106.13(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 細田 和男
  • 研究担当者
    森林管理研究領域 高山 範理

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