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リュウキュウイノシシの個体数、スダジイ堅果豊作後に増加傾向

掲載日:2024年7月9日

奄美・沖縄地方に生息するリュウキュウイノシシ(以下、イノシシ)は、スダジイ堅果*1) が豊作のときには、早い時期から繁殖を開始し、個体数が増える傾向にあることが分かりました。これはイノシシの個体数変化を予測する上で重要な発見であり、イノシシの森林生態系における役割を評価することや農作物被害を軽減するための管理計画を立案することに役立つ成果です。

奄美・沖縄地方ではイノシシは伝統的な食材となる重要な狩猟対象ですが、サトウキビなどの農作物に被害を与える害獣としての側面もあるため、適切な管理計画の設定が必要です。また、地面を掘り起こして餌を探す習性を持つために、林床の動植物の生息に影響を与える可能性も指摘されています。研究グループは、イノシシの繁殖スケジュールや個体数変化の傾向などの基礎的な生態を明らかにするために、沖縄島やんばる地域の森林に設置した自動撮影カメラの撮影記録14年分とスダジイ堅果の豊作との関係を解析しました。

解析の結果、当年仔*2) の出現は、堅果不作時には概ね翌年5−6月に始まるのに対し、豊作時には翌年1−2月に始まることが明らかになりました。また、各年8−9月の相対個体数*3) は前年の相対個体数が多いと減少し、前年に堅果が豊作であると増加する傾向があることが判明しました。

*1) 堅果:果実のタイプの1つで固い皮をもつもの。ドングリともいいます。

*2) 当年仔:その年に生まれたイノシシの子ども(うり坊)。満1歳未満。

*3) 相対個体数:この研究では実際の個体数は推定しておらず、2007年の個体数を1として表した相対的な個体数を推定しています。

本研究は、European Journal of Wildlife Researchにおいて2024年4月に公開されました。)

写真:リュウキュウイノシシの当年仔
写真:リュウキュウイノシシの当年仔(沖縄県国頭村にて著者撮影)

図:沖縄島やんばる地域におけるリュウキュウイノシシの相対個体数の変化
図:沖縄島やんばる地域におけるリュウキュウイノシシの相対個体数の変化(8−9月の相対個体数)。相対個体数はスダジイ堅果豊作の有無と前年相対個体数の影響を受けるため、スダジイ堅果豊作の翌年には相対個体数は増加するが(2008、2010、2018年)、豊作年が2年連続した場合にはやや減少する傾向がある(2011、2019年)。論文掲載の図を一部改変。

  • 論文名
    Wild boar population fluctuations in a subtropical forest: the crucial role of mast seeding in Ryukyu Islands, Japan(琉球列島亜熱帯林に生息するリュウキュウイノシシの個体数変動とスダジイ堅果豊凶との関係)
  • 著者名(所属)
    島田 卓哉(企画部)、飯島 勇人(野生動物研究領域)、小高 信彦(九州支所)
  • 掲載誌
    European Journal of Wildlife Research, 70(3), April 2024 DOI:10.1007/s10344-024-01797-0(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 佐藤 保
  • 研究担当者
    企画部 島田 卓哉
    九州支所 小高 信彦

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