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掲載日:2024年7月18日
木材が熱で軟化する温度は木材主成分の高分子化合物リグニンの疎密さと密接に関係していることが森林総合研究所の所蔵標本を使った分析で明らかになりました。熱による木材軟化の仕組みに関する新知見で、木材の変形加工や人工乾燥の技術高度化に応用できる成果です。
研究グループは、採取地点など由来が明らかな木材標本41樹種87個体それぞれの熱軟化特性について、樹種・組織構造的特徴・生育環境(生育地点の緯度や年降水量)・木材密度・リグニン構造との関係を調べました。その結果、リグニンを構成する「シリンギル核」の比率*1) が高い木材ほど、軟化する温度が低いことが分かりました。シリンギル核の比率が高いと、リグニンは疎(まば)らな構造になり、低いと密な構造になるためと考えられます。
41樹種それぞれの軟化温度は、シリンギル核を含まない針葉樹やシリンギル核の比率が低い広葉樹の個体では85~95度、シリンギル核の比率が高い広葉樹の個体では70~80度でした。一方、水分を送る道管の分布状況など木材の組織構造や生育環境と軟化温度には関係がありませんでした。
*1) グアイアシル核とシリンギル核を単位として構成されるリグニンにおいてシリンギル核が含まれる比率。
(本研究は、Holzforschungにおいて2024年1月に公開されました。)
図 木材標本41樹種87個体の熱軟化温度とリグニン構造の関係
標本を水に浸けて、標本内部まで水分が含まれた「飽水状態」で測定を行いました。図の横軸は、1に近いほどシリンギル核が多く含まれるリグニンであることを意味します。シリンギル核リグニンをほとんど含まないサンプルの一部が、誤差のためマイナス値を示しました。シリンギル核の比率が高くリグニン構造が疎らな標本ほど、熱で軟化する温度が低くなる関係が認められました。
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