研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2024年紹介分 > 真鶴半島の「お林」でクスノキの巨木は最大で幅32mの枝葉を広げていた
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掲載日:2024年8月1日
江戸初期にクロマツ、明治期にクスノキが植林され、それらが天然の広葉樹と混交する真鶴半島(神奈川県)の「お林」の巨木を対象に、枝葉をつける部分(樹冠)の幅を測ったところ、クスノキは最大32mまで広げていた一方、クロマツは半分の16m以下のスペースで生育していました。老齢・巨木の針広混交林を再生・復元しようとする際の目標像の設定に参考となる成果です。
真鶴町と研究グループは2023年に「お林」で、胸高直径(人の胸位置に当たる幹直径)が60~200cmの103本の樹木を対象に樹冠幅を測定しました。その結果、最大幅はクロマツの16mからクスノキの32mまでに及んでいることや、胸高直径とともに樹冠が広がる傾向を示すことを明らかにしました(図)。クスノキでは樹冠幅が広いほど胸高直径の成長量も大きい傾向があったことから、樹冠幅は老齢・大径の広葉樹の活力の指標になると考えられました。
また、樹冠の水平方向への広がりを真円と想定すると、1本当たりの最大専有面積はクロマツが201m2、クスノキが804m2となり、1ha当たりそれぞれ50本と12本に相当しました。
樹木は成長とともに樹冠を横方向に拡大するため、必要とするスペースが広くなっていきます。広い神社の境内のような開けた環境であれば好きなだけ樹冠を広げられます。しかし、森林内では隣り合う樹木との競争があるので使える空間に限りがあり、巨木になることのできる空間の大きさも樹種によって異なることが予想されます。ただ実際の測定例はこれまで、ほとんどありませんでした。
(本研究は、日本森林学会誌において2024年5月に公開されました。)
写真:神奈川県真鶴町の「お林」でクロマツやクスノキの巨木の周囲長を測定。
この写真は周囲長667cm(直径換算で212cm)のクスノキを測っているところ。
図:胸高直径と樹冠の幅の測定値をプロットしたもの。
図中の大きな点はクロマツ(左図)とクスノキ(右図)の測定値を表し、小さな点はそれ以外の樹種を表している。
図中の線分は回帰直線と95%区間を示している。(当該論文の図1を一部改変)
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