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更新日:2013年7月26日

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東北支所 もりゼミ : 川の魚は落葉で育つ

【話題提供者】阿部俊夫 (東北支所 森林環境研究グループ)

開催日時

2013年8月26日  15時00分から

場所

名称 独立行政法人 森林総合研究所 東北支所 会議室
住所 〒020-0123 岩手県盛岡市下厨川字鍋屋敷92-25
電話番号 019-641-2150
交通案内 位置
・東北自動車道 「滝沢インターチェンジ」から南へ約3km
(インターチェンジから分岐点を右車線のまま 盛岡・安代 の表示にしたがって国道4号線へ入る。「分れ南」(交差点)を左折し国道4号線を盛岡方面へ進む)
・JR東日本、IGRいわて銀河鉄道 「盛岡駅」 から北へ約9km 、 バスで約20~30分
(盛岡駅東側から県道220号線(氏子橋夕顔瀬線)へ入る。「上堂」(交差点)を左折し国道4号線へ入り二戸方面へ進む)
・IGRいわて銀河鉄道「厨川駅」からバスで約10~15分

バス路線
最寄のバス停: 「森林総合研究所前」、「巣子(すご)」
岩手県北バス: 「盛岡駅」(2,3番乗場)・「厨川駅前」から県立大、盛岡大、沼宮内、大更、平舘、八幡平等方面行き 乗車→「森林総合研究所前」下車徒歩3分
岩手県交通バス: 「盛岡駅」(2番乗場)・「厨川駅前」から県立大、巣子車庫行き乗車→「森林総合研究所前」下車徒歩3分
ホームページ 独立行政法人 森林総合研究所 東北支所

主催・共催等

主催 独立行政法人 森林総合研究所 東北支所 研究員

内容

【要旨】 古くから水辺の森林には、水生生物を育む“魚つき林”としての機能があると信じられてきました。
近年、川の周りにある森林(渓畔林、河畔林)に関しては、生物の生息場所形成、水温・水質形成など川の生態系にとって重要な機能を持つことが分かってきました。
本報告では、こういった機能のうち、森林がエサ資源の供給を通じて魚など川の生物の生息にどう貢献しているかをお話ししようと思います。

渓流への有機物供給―落葉が主役―
川は上流へ行くにつれて多くの支流に分かれ小さくなります。源流部の渓流はとても川幅が狭いため、川全体が森林に覆われてしまうこともあります。
茨城県のブナ林に覆われた渓流で1年間に川に供給される有機物量を調べたところ、ほとんどが森林からのリター(落葉・落枝)であり、渓流内での1次生産(石の表面に付く藻類)はわずか1.8%でした。
リター供給は10-11月に多く、73%が広葉樹落葉でした。一方、藻類の1次生産は樹木の葉が開く前の3-4月が最も活発で、夏季の生産は極めて低調でした。

渓流の食物連鎖―森林の寄与は大きい―
近年、安定同位体を用いて食物連鎖を解析する手法が開発されました。
生物の体を構成する炭素、窒素の安定同位体比はエサよりも少し高くなるため(経験的には炭素で1‰、窒素で3.4‰上昇)、炭素同位体比を横軸、窒素同位体比を縦軸に取ってグラフを描くと、同じ食物連鎖に属する生物は右上がりに点が連なります。
この手法を用いて、5月にブナ林の渓流で食物連鎖を調べたところ、同位体グラフ上で藻類の右上や近くにプロットされた水生昆虫は数種類のみでした。
一方、落葉や細粒状有機物(落葉が分解したもの)の右上には、水生昆虫や甲殻類の多くがプロットされ、次いで肉食の水生昆虫、イワナの順で右上がりに連なっていました。
このことから、落葉が渓流の生物の重要なエサ資源になっていると考えられました(ただし、窒素同位体比の上昇幅は経験則より小さい)。
この調査は藻類生産の盛んな3-4月のすぐ後であったことから、他の時期ではさらに藻類の寄与は小さいと推測されます。
また、渓流魚については、川へ落ちた陸生動物も重要なエサであり、年間エサ量の約半分を占めるという報告もあります。
水生動物、陸生動物の両方を考慮して安定同位体でヤマメのエサ起源を調べた研究では、42.2-78.1%が森林などの陸上植物起源と推定されています。

川への落葉供給源の推定―森林をどこまで保全するか?―
以上のように、落葉は渓流の生物のエサ資源として重要ですが、それでは落葉供給源として森林を保全しようとした場合、川岸からどのくらいの範囲を保全すればよいでしょうか?
この問題は、落葉の移動距離に関係してします。北海道の河畔林で樹高10数mのヤナギの葉にスプレーで着色し落葉散布を調べたところ、落葉は根元から15-25mまでの範囲に落ちることが分かりました。
なお、地面での落葉の再移動は、積雪と林床植生が移動を阻害するため、ごくわずかでした。
落葉の散布範囲は、風の強さや樹高、樹種によって変わると考えられますが、現在、風速や葉の落下速度などから落葉散布を面的に予測できるモデルを開発中です。

対象

どなたでも参加できます。

定員

約40名

費用

無料

申込方法

事前予約不要

その他

森林総合研究所・東北支所の研究員が不定期に行っている自主ゼミです。
演者の所属、テーマなどに制限はありません。
時には当研究所へのお客様にも話題を提供していただいています。
発表テーマに興味をお持ちになった方、どうぞご遠慮なくお越しください。
また、もりゼミ開催案内の配信をご希望の方は 幹事 までご連絡ください。

お問い合わせ

所属課室:東北支所 担当者名:生物多様性グループ 大西 尚樹、森林資源管理研究グループ 林 雅秀

〒020-0123 岩手県盛岡市下厨川字鍋屋敷92-25

電話番号:019-641-2150 (代)

FAX番号:019-641-6747

Email:morisemi-admin@ml.affrc.go.jp