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更新日:2022年11月30日

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生物多様性研究とIPBESへの貢献

生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学—政策プラットフォーム(IPBES: Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)は、科学的なエビデンスに基づく政策提言を目的としています。様々な分野の専門家が、森林を始めとする生態系の現状や将来、農林水産業や民間企業、市民を含む様々なステークホルダーの効果的な連携などについて分析し、持続可能な社会への寄与を目指しています。
ここではIPBESの概要を示すとともに、森林総合研究所におけるIPBESの活動への貢献を示していきます。

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出典元:環境省

Photo by IISD/ENB | Diego Noguera

IPBESの概要

IPBES(イプベス)は生物多様性と生態系サービスに関する政策課題について、科学と政策の関係性を強化する目的で2012年4月に設立された政府間組織です。140近い国・地域が参加しており、事務局はドイツ・ボンに設置されています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)をモデルとしており、その代表的な活動は評価報告書の作成です。2022年7月時点で、地球規模評価報告書、4つの地域評価報告書、3つのテーマ別評価報告書、2つの方法論評価報告書、2つのワークショップ報告書を公表しており、今後も毎年1~2件の評価報告書を公表する計画です(下表)。評価報告書は生物多様性条約の目標策定や他の関連条約(例:砂漠化対処条約、ワシントン条約、ラムサール条約)に基づく国際的な取り組み、各国の環境政策などに活用されています。

表:IPBESが公表した、または作成を計画している評価報告書やワークショップ報告書。評価報告書には、地球規模・地域、テーマ別、方法論の3種類がある(下線は2022年7月時点で公表済み)。

カテゴリ 第1期作業計画(2014—2018) 第2期作業計画(2019—2030)

地球規模・地域

地球規模評価

第2回地球規模評価(予定)

(地域評価)

  • アジア・オセアニア
  • 南北アメリカ
  • アフリカ
  • ヨーロッパ・中央アジア
 
テーマ別 花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産 生物多様性、水、食料及び健康の間の相互関係(ネクサス)
土地劣化と再生 生物多様性の損失の根本的要因、変革の決定要因及び生物多様性の2050ビジョン達成のためのオプション(社会変革)
野生種の持続可能な利用 生態学的連結性(予定)
侵略的外来種  
方法論 シナリオとモデル 生物多様性及び自然の寄与に係るビジネスの影響と依存度
自然とその恵みに関する多様な価値観の概念化  
その他   生物多様性とパンデミックに関するワークショップ報告書
  生物多様性と気候変動に関するIPBES-IPCC合同ワークショップ報告書

評価報告書とは異なり、IPBES総会で政策決定者向け要約(SPM: Summary for Policymakers)の交渉・採択を経ないで公表されたワークショップ報告書など。

森林総合研究所の生物多様性研究とIPBESへの貢献

先に示した評価報告書やテーマ別報告書の内容からは、生物多様性の保全を考える上で森林だけではなく、農地や都市などの生態系と人との関わり合いがいかに重要なのかが見えてきます。森林総合研究所では、国内外の森林生態系を中心に植物や昆虫などの生物多様性に関する研究を実施してきましたが、加えて、シナリオ分析やモデリングを含む様々な手法を用いて、気候変動(緩和や適応)、生態系の変化(生物多様性)、社会変革(生活の質やウェルビーングも含む)の関係を明らかにする研究も展開しています。気候変動による環境の変化や人の活動が生物多様性に与える影響は大きく、その解決には幅広い専門知識の集約が必要となっており、国内外の研究者と共同で研究を進めています。

【プレスリリースに見る最近の研究成果】

また、上記以外の研究の成果についても、その一部はHPの研究成果でご覧いただけます。そしてこれら学術論文の一部は、IPBESが作成した報告書等に引用されており、科学的知見の向上にも寄与しています。

森林総合研究所では、これまで下記5名の代表執筆者(Lead Author)と1名のレビュー編集者(Review Editor)が評価報告書の作成に携わっています(公表予定含む)。

  • 滝久智 花粉媒介(第6章、代表執筆者)2016年公表
  • 岡部貴美子 アジア・オセアニア(第6章、代表執筆者)2018年公表
  • 古川拓哉 野生種の持続可能な利用(第2章、代表執筆者)2022年公表
  • 小山明日香 侵略的外来種(第3章、代表執筆者)2023年公表予定
  • 森田香菜子 社会変革(第4章、代表執筆者)2024年公表予定
  • Ronald C. Estoque ネクサス(第2章、レビュー編集者)2024年公表予定

それぞれの報告書において、代表執筆者は研究の専門分野の知識を活かして、その取りまとめに貢献してきました。

  • 花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関するテーマ別評価報告書(2016年公表)
    IPBESが公表した最初の報告書のひとつである。農作物を含む植物が実を結ぶために必要な花粉媒介は、花粉媒介者とよばれる昆虫類、鳥類、コウモリ等の多様な動物による貢献が大きい。これら花粉媒介者は、一部地域では土地利用、集約的農業、農薬、外来種、病気、気候変動等によって危機に瀕していることが示されたが、多くの地域では不明な点が多いことが指摘された。一方で、それら危機や問題に対する対策についても明示された。滝は、対策のトレードオフやシナジーについての執筆を分担した。
    SPMと報告書(外部サイトへリンク)
    IPBES花粉媒介者、花粉媒介及び食料生産に関する価報告書SPMの概要(IGES)(外部サイトへリンク)
  • アジア・オセアニア地域評価報告書(2018年公表)
    アジア・オセアニア地域は、近年の急速な社会・経済変化による環境への負荷が大きいことが特徴であり、陸域・海洋生態系共に大きな影響を受けていることを明らかにした。岡部は、ガバナンスオプションの執筆を分担し、REDD+を含む革新的な資金提供が、森林と保護区の管理の改善に寄与し、愛知目標や SDGsの達成に貢献する可能性の提示に貢献した。
    SPMと報告書(外部サイトへリンク)
    SPM公式和訳(環境省)(外部サイトへリンク)
  • 野生種の持続可能な利用に関するテーマ別評価報告書(2022年公表)
    野生種を利用するために行われる4種類の収奪的行為(漁獲、採集、伐採、陸生動物捕獲)と非収奪的行為の持続可能性を評価した報告書。少なくとも約5万種の野生種が人間に利用され、過剰利用により多くの種が存続を脅かされていることが明らかになった。古川は、持続可能な利用の概念化の章を担当し、伐採の持続可能性の概念が木材生産中心から他の生態系サービスを含めた多機能管理を経て、さらにステークホルダー間や世代間の衡平性や多様な価値観を考慮する段階に移行していることを示すことに貢献した。
    環境省主催のIPBES-9報告会の発表資料(PDF:2,617KB)
    SPMと報告書(外部サイトへリンク)

 IPBES関係のイベント

【動画】

【プログラム】

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