― 発表の要旨 ―
(13:30〜14:00)
関西支所 育林部 風致林管理研究室 深町加津枝
里山ブナ林をとりまくランドスケープを対象に,構成要素である土地被覆の分布と変容パターン,および里山ブナ林の過去の使われ方と生態的特性の関係を明らかにしました。里山ブナ林は,地形や集落からの距離などの空間的関係に規定され,様々に利用された林分の集合体として把握されました。また,里山ブナ林の管理手法と植物の種組成,多様性,林分構造との特徴的な対応関係を明らかにしました。今後の保全管理計画では,里山ブナ林に特徴的な社会,生態的特性を維持してきた多様な管理手法を担保する必要があることが示されました。
森林が気候に及ぼす影響をモデル化する 全文はこちらから
(14:00〜14:30)
森林環境部 防災科 気象研究室主任研究官 渡辺 力
地球環境の悪化が危惧される中,世界の各国では,温暖化など今後の気候変動を予測して対策に役立てようとする試みが行われています。しかし,気候変動を正確に予測するには,まだ多くの解明すべき問題が残っています。森林が大気に及ぼす影響もその一つです。森林では,植物が葉の気孔を調節することで光合成や蒸散を調節していますが,その影響は地域や地球規模の気候にも及んでいます。私たちは,森林で年間を通して詳細な気象観測を行いながら,モデルを作成し,気候変動予測などに役立てるための研究を行っています。
タイ熱帯林の生育環境と季節変化の観測 全文はこちらから
(14:30〜15:00)
企画調整部 海外研究情報調査科 海外森林環境変動研究チーム長 沢田 治雄
タイの熱帯季節林地帯における季節的,経年的な変化を人工衛星データを用いて観測し,種々の森林型の分布とその生育環境の実態を調査しました。人工衛星データとしては地上分解能や観測周期の異なるノア衛星,ランドサット衛星などを組み合わせ,各衛星データの特徴を生かした利用法を開発しています。これらによって,熱帯季節林地帯の水分環境条件に基づく森林の季節変動や,典型的な森林地帯における伐採・火入れなどによる質的な変化などを明らかにしました。
環境と性能 −木質材料だけにできること 全文はこちらから
(15:20〜15:50)
木材化工部 材質改良科 複合化研究室主任研究官 渋澤 龍也
木材に代表される植物を原料として製造される材料を木質材料と呼びます。最近では,化学的な改質や異種材料との複合化を行った木質材料が開発され,住まいの快適性や耐久性の向上に寄与してきました。しかし,木質資源の有効利用や地球環境の保全の観点から評価すると,これらの木質材料にも欠点があることが分かってきました。環境に与える負荷を少なくしながら,材料としての性能を確保するためにはどのような工夫をすればよいのでしょうか。
虫とウッドチップを使って牛糞を堆肥にする 全文はこちらから
(15:50〜16:20)
多摩森林科学園 森林生物研究室長 新島 溪子
臭くて困りものの家畜排泄物と,公園緑地から出される剪定枝葉,それに山に放置された間伐材等を利用して堆肥を作り,これを有効利用するための提案です。分解しにくいウッドチップを,虫に食べてもらおうというのが新しい発想です。堆肥で育ったカブトムシはペットに,シマミミズは釣りの餌にと,副産物も期待できます。土着の虫を導入するときに,その土地の気候に合った微生物も導入されるので,一層分解が促進されます。ウッドチップの消臭効果も高いことが分かりました。実用化が期待される技術です。