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更新日:2010年6月1日

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自然探訪2009年1月 猩紅(しょうこう)病菌

カツラマルカイガラムシに寄生した猩紅(しょうこう)病菌

昆虫類も我々ほ乳類と同様、微生物に寄生されて病気になることがあり、昆虫にとっては、菌類(カビ、キノコの仲間)も、ウイルスや細菌と並んで重要な病原微生物になっています。菌類に感染した虫が野外で見られるのは、一般的には春、夏、秋と虫がよく見られる季節と重なります。しかし冬だからといって、菌類に感染した虫が見られないわけではありません。写真1は、しょうこう病菌(Fusarium coccophilum)に寄生されたカツラマルカイガラムシです。 介殻(かいがら)の周囲からは、この菌に特徴的な美しい赤いスポロドキア(分生子座)と呼ばれる胞子形成器官が形成されています。実際に感染するのは夏ですが、適度に乾燥していれば、スポロドキアは活性を保ったまま翌年まで残存するので、冬でも見ることができます。スポロドキアは雨や露などに濡れて吸水すると、大量に胞子を吹き出してきます(写真2)。

寄主のカツラマルカイガラムシ(Comstockaspis macroporana)は、さまざまな広葉樹を吸汁加害するカイガラムシで、多数が加害すると被害木は枯死します。かつてはクリの害虫としてよく知られていましたが、近年はコナラ、ミズナラ、ケヤキなどの林木でも大きな被害をもたらしています。カツラマルカイガラムシなどのカイガラムシ類が大発生すると、それに伴ってしょうこう病菌の発生を見ることがあります。カイガラムシに対するこの菌の病原性を疑う報文もありましたが、クワシロカイガラムシに対する詳細な感染実験がなされ、この菌の病原性が確認されるとともに、介殻の存在で菌に感染しにくくなっていることが明らかになりました。実際に、この菌が野外で流行病を起こし、ときには局地的にほとんどカイガラムシが全滅状態になることもありますので(写真3)、うまく利用すればカイガラムシの防除に使えるかもしれません。この菌の有性世代は子のう菌で、Nectria flammeaという名前がつけられています。このN. flammeaもカイガラムシ類の寄生菌として知られています。



写真1
写真1

写真2
写真2

写真3
写真3

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