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更新日:2010年7月1日

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自然探訪2009年7月 オオヤマレンゲ

オオヤマレンゲ(Magnolia sieboldii ssp. japonica

梅雨の長雨の時期、山登りが好きな方は、梅雨明けのアルプス登山を待ち侘びている頃かもしれません。オオヤマレンゲは、そんな梅雨の深山に美しい花を咲かせる、隠れた名花です。

オオヤマレンゲはモクレンの仲間で、大きいものでも樹高3m程度の落葉低木です。北関東地方から屋久島にかけての標高1000~2000mの高地に生育します。6月中旬から7月にかけて、ナツツバキと同じくらいの大きさの花を咲かせます。俯きに咲く半球状の白い花は芳香を漂わせ、清楚で気品に溢れています(写真1)。

オオヤマレンゲの花を見るには、梅雨の晴れ間を狙うか雨を覚悟の上で出かけなくてはなりません。そのうえ生育環境がガレ場や沢沿い、尾根筋の苔むした岩場などに限られていて数が少ないので、なかなか見つかりません。最も有名なのは奈良県の大峯山系です。最高峰・八経ヶ岳付近には日本最大のオオヤマレンゲ群落があって国の天然記念物に指定されています。関東近辺ではかなり稀になってしまいますが、志賀高原や谷川岳などで花に出会うことが出来るはずです。

開花期は1ヶ月程度ですが、個々の花の寿命は4~5日ほどしかなく、その間にも花の見た目は刻々と変化していきます。約9枚の花被片の内側には、雌蕊群と、それを螺旋状に取り巻く無数の淡黄色の雄蕊が見られます。開花直後には雌蕊だけが成熟していて、雄蕊はまだ閉じています(写真2)。花は開花後約1~2日で一旦閉じ、再び開いたときには雄蕊だけが開いて花粉を放出します(写真3)。このような開花の仕方は「雌性先熟」と呼ばれていて、モクレンの仲間に共通して見られる特徴です。好みの違いはあるでしょうが、私は開花直後の雌期がオオヤマレンゲの花が最も美しい瞬間だと思います。

オオヤマレンゲは、日本から遠く離れた中国中南部にも隔離分布しています。世界遺産・黄山は代表的なオオヤマレンゲの自生地です。世界には、オオヤマレンゲの仲間、すなわち夏に下向きの花をつける特徴を持ち、モクレン属のなかのオオヤマレンゲ節に分類される植物は、3種3亜種が知られています。その分布をみると、ヒマラヤ東部、中国四川・雲南から朝鮮半島、日本にかけての、東アジアの多雨山岳地帯に点在しているのです。

花が下向きに咲くのは、雨から花粉などを保護するための適応であるという説があります。オオヤマレンゲの花の美しさは、梅雨に咲くからこそなのかもしれません。

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