文字サイズ
縮小
標準
拡大
色合い
標準
1
2
3

森林総研トップ

ホーム > 研究紹介 > イベント > 1996~2010年イベント・セミナー一覧 > 平成14年度森林総合研究所関西支所研究発表会

ここから本文です。

平成14年度森林総合研究所関西支所研究発表会

来たる10月17日,京都市呉竹文化センターにて平成14年度研究発表会を行います。これは,私どもの研究所における研究成果を広く一般の方々にも知っていただくための催しで,毎年行っているものです。どなたでもお越しいただけます(予約不要,入場無料)。

  • 日時:平成14年10月17日(木曜日)10時00分~12時30分
  • 場所:京都市呉竹文化センターホール
    (近鉄・京阪丹波橋駅下車すぐ,地図)
    <駐車場がありませんので,自家用車でのご来場はご遠慮下さい。>
  • 問い合わせ:森林総合研究所 関西支所 連絡調整室 (電話 075-611-1201[代])

プログラム

 

(特別講演)地球温暖化対策に関わる森林研究

林野庁研究普及課首席研究企画官佐藤

地球温暖化は着実に進行している。先のIPCC第3次報告書では、地球の平均気温が20世紀の間に0.6℃上昇、気象庁のとりまとめでも、2000年までの100年間で都市化の影響が強い東京で年平均気温が3.0℃、京都でも2.5℃上昇した。まさに焦眉の問題と化している。60年代から80年代にかけて森林生産力に関する研究が精力的に行われた。様々なタイプの森林を対象に純生産量等が調査され、同時に森林土壌の炭素現存量等も測定された。光合成も単葉レベルから始まり個体レベル、群落レベルとスケールアップされ研究されてきた。これらの研究は今回与えられた課題の研究の端緒になっていて、得られた成果は土壌も含めた森林生態系の炭素循環解明の礎となり、検証の意味も兼ねたフラックス研究へと進展、同時に炭素循環のモデル化、現存量分布のマップ化等、コンピュータを用いた予測研究にも寄与してきた。さらに、高二酸化炭素濃度下での光合成の問題や温暖化した際の植物相、動物相への影響等も研究俎上に載せられ、今日に至っている。97年にCOP3で採択された温室効果ガスの削減を目標とする京都議定書は、昨年11月のCOP7で実施ルールが採択され、本年6月の国会で批准されている。ここでは、90年以降の新規・再植林や人為的活動(森林整備等)による二酸化炭素吸収量を全体の排出量から差し引くという仕組みが取り入れられている。林野庁では、森林に課せられた3.9%の削減目標に向けて、森林吸収源10ヵ年対策を立て、温暖化対策に講じている。こうした施策と連動して森林バイオマスの炭素吸収量の計測システムや検証体制の確立・整備、吸収源CDM(クリーン開発メカニズム)に関する基礎的情報の充実、炭素収支の観点から望ましい政策シナリオの提示等の研究が着手されている。さらに、木質バイオマスをエネルギーとして利用することにより温暖化防止に寄与しようという研究も現在進展中である。「地球温暖化対策」をどう理解するかにより異なるが、現在行われている森林研究のほとんど全てが温暖化絡みといえなくもない。従って、その動向の一部を紹介したい。

里山林の環境保全機能

森林環境研究グループ長金子真司

都市周辺の里山林はレクレーションや野外教育の場として多くの人々に利用されるとともに、都市の人々に緑の景観として安らぎを与えている。一方で里山林は二酸化炭素の吸収固定、水質浄化、水源涵養等の環境保全機能を担っている。近畿地方は古くから行政・文化の中心であったことから、都市周辺の森林は幾度となく伐採されてきた。その結果、里山地域には養分が失われた土壌が広く分布している。一見豊かにみえる里山林も生産力の低い瘠せ土に成立している。森林総合研究所関西支所森林環境研究グループでは、このような里山林の環境保全機能を解明するために、二酸化炭素やその他物質の動態に関する研究を行っている。ここでは窒素化合物の動態を中心に最新の成果を報告する。

里山林のCO2吸収量の測定

森林環境研究グループ玉井幸治

地球温暖化対策に貢献するとされる森林による二酸化炭素吸収量は正確に測定することが求められており、森林と大気間における二酸化炭素移動量の直接観測が世界各地で展開されている。森林総合研究所関西支所では、関西地域の里山に広く存在する、かつてはげ山であった落葉広葉樹二次林を対象に、森林と大気間における二酸化炭素移動量の観測を、京都府相楽郡山城町で行っている。観測方法には、世界標準とされる観測タワー(口絵写真)を用いた乱流変動法のほかに、それを検証するデータを得るためのチャンバー法などを行っている。今回の発表では、観測方法の紹介などとともに、世界各地における観測例と比較し、京都府下の里山林における二酸化炭素吸収の実態を報告する。