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森林総合研究所では、平成26年10月31日の創立109周年式典において、以下のとおり理事長表彰を行いました。
業績名 |
アルミニウムを無毒化するユーカリの耐性機構の解明 |
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受賞者 |
田原 恒 (生物工学研究領域 主任研究員) |
受賞要旨 |
強酸性土壌下で溶出するアルミニウムは、植物の成長を大きく阻害する。受賞者はユーカリが強酸性土壌中でも旺盛に成長することに着目し、水溶性タンニンの1種が根でアルミニウムと反応することで無毒化している機構を明らかにした。 この成果は2014年のPlant Physiology誌に掲載され、国際的評価を得ている。また、森林総合研究所が目指すスーパーツリーの開発への重要な技術基盤の1つとなる一方、強酸性土壌地域の緑化に大いに貢献できる。 |
業績名 |
国産CLTの開発研究と早期JAS化への行政的・社会的貢献 |
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受賞者 |
CLT研究開発チーム 宮武 敦 (複合材料研究領域 チーム長) |
受賞要旨 |
近年欧州ではクロス・ラミネイディド・ティンバー(CLT)を用いて、中高層の木造ビルが建設されているが、我が国ではCLTの材料規格がなく、製造・評価方法も未整備であった。 そのため、宮武敦を中心とするチームは、国産材を使ったCLTの研究開発を行い、その成果を「直交集成板の日本農林規格(JAS)」(平成25年12月制定)の原案に反映し、早期JAS化への行政的・社会的貢献を果たした。国産CLTの普及により国産材の需要拡大や林業再生などが期待される。 |
業績名 |
分子育種の基盤技術であるスギの遺伝子組換えの効率化 |
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受賞者 |
小長谷 賢一 (森林バイオ研究センター 主任研究員) |
受賞要旨 |
スギの育種に分子生物学的手法を適用するためには、効率的な遺伝子組換え技術の開発が必須である。従来、スギの遺伝子組換えの手法は報告されていたものの組換え効率の低さが問題であった。 受賞者はこれまでの方法について培養支持体等を改良し、高効率な遺伝子組換え手法を確立した。さらに本技術を利用して、遺伝子組換えにより無花粉スギを作出することに世界で初めて成功した。本技術が分子育種の一手法として普及することが期待される。 |
業績名 |
水文観測による間伐効果の解明 |
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受賞者 |
久保田 多余子 (東北支所 主任研究員) |
受賞要旨 |
国民の関心が高い森林の水源かん養機能に及ぼす森林管理の影響を明らかにするため、流域試験地の水収支の長期観測を活用し、人工林の間伐が森林の蒸発散量を減少させ水流出量の増加につながることを我が国で初めて定量的に示した。 関連成果にもとづき「森林と水の謎を解く(2)間伐と水流出」を企画し、科学的知見を正確かつわかりやすく解説し、社会への成果の普及に尽力した。 |
業績名 |
森林におけるシカ被害対策に資する新たな捕獲技術の開発 |
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受賞者 |
高橋 裕史 (関西支所 主任研究員) 八代田 千鶴 (関西支所 主任研究員) |
受賞要旨 |
増えすぎたシカは全国的に深刻な森林被害を引き起こしており、個体数の低減を図るための技術開発が求められている。 そのため、八代田千鶴は、一定の給餌プログラムを繰り返すことにより野生ジカの誘引が可能になることを明らかにした。さらに、高橋裕史は森林の中で使いやすく捕獲効率のよい「森林用ドロップネット」を開発した。これらの成果は林野庁および農林水産技術会議事務局等から高く評価され、広く利用されるとともにシカ管理に関わる法制度の改革にも貢献した。 |
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