今月の自然探訪 > 自然探訪2009年 掲載一覧 > 自然探訪2009年12月 イイギリ
更新日:2010年7月1日
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11月の終わり頃から初冬にかけて、すっかり葉を落とした枝に赤い実がびっしりついた木(写真1、2)があることにお気づきでしょうか?本所樹木園内や、森林総研周辺にも点々とみられ、多摩森林科学園内にはたくさんあります。
この木はイイギリといい、近い仲間はほとんどが亜熱帯に分布する、南方系の落葉樹です。自然の林では限られた地域の限られた地形の場所にしか出てこないので、あまりなじみのある木ではないかもしれませんが、目立つ赤い実、ハート形の大きな葉(写真3)といった特徴があるので、一度見るとインパクトのある木です。
一本の木に実がたくさんつき、鳥にとってはさぞかし食べでがありそうに見えますが、実を割ってみると、食べられる部分は非常に薄く、細かい種がびっしり入っています。直径1cm足らずの実に50~70個くらい種が入っていて、あまり食べでがあるものとは思えません。しかし、イイギリの実が熟す頃には他に食べるものが少なくなるので、鳥も仕方なく食べているようです。おなかをすかせた鳥の足下を見るようにして、たくさんの種を運ばせているのでしょう。
この木は明るいところでは非常に成長が早く、伐採跡地や崩壊跡地などでいち早く育ちます。20年もあれば、高さ20mくらいの林を作ってしまいます。しかし、暗いところでは育つことができません。そのため、地形が険しくてたまに崩れるような山にみられるのです。
自然の山では限られたところにしか出てこないイイギリですが、都市の林ではよく目につきます。東京都心部の大きな庭園や緑地では普通に見られ、目黒の自然教育園では大木があります。もし、都心で写真のような赤い実やハート形の葉を見たら、ぜひご覧になって下さい。
写真1 : イイギリの樹形。毎年1段ずつ枝を出す。(高知)
写真2 : 落葉後の実は目立つ。(高尾)
写真3 : イイギリの若木。葉はハート形。(八王子)
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