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更新日:2012年11月1日

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自然探訪2012年11月 ニホンリスとオニグルミ

ニホンリスとオニグルミ

晩秋になると、慌ただしく木の実を運ぶニホンリスの姿を見るようになります。ニホンリスは地面に穴を掘って冬眠するシマリスと違って、冬の間、木の上で活動を続けます。ですから、食べものが少ない冬に備え、秋のうちに、木の実を埋めておく貯食という行動をします。それで、晩秋はいつにも増して、忙しそうなニホンリスを見かけるわけです。
貯食する食べものとして、もっとも都合が良いのは、オニグルミです。堅い殻に包まれていて、腐ることはありませんし、殻を割って中身を餌として利用できる動物は限られていますから、盗まれる心配も少ないです。しかも、比較的大きく、栄養価も高いので、1個ずつ運んで埋めておく作業コストに見合う収益が期待できます。ですから、ニホンリスは一生懸命、オニグルミを遠くまで運んで、1個ずつ大切に貯食します。貯食されたオニグルミは、全て冬の間に利用されてしまうわけではありません。そのいくつかは食べ残され、運ばれた先で発芽するチャンスをもちます。オニグルミにとって、リスは重要な種子散布者なのです。
ニホンリスがオニグルミを食べる食べ方は独特です。クルミの縫合線先端から削っていき、隙間ができるとそこに歯を差し込み、歯の向きを少し変えることで、テコの原理で開けます。少し削ってはテコを試し、それでダメならばさらに削り進んで、またテコを試します。うまくいけば、5分くらいで見事に半分に割り、中身を食べることができます。なかなか半分に割れない場合でも、縫合線に沿って1周削れば、20分ほどで間違いなく半分に割ることができます。この割り方だと、中身をきれいに食べきることができ、とても効率的です。
しかし、オニグルミを割るこの方法は、どのリスも生まれつきできるというわけではありません。オニグルミが生育していない地域のニホンリスは、オニグルミを半分割できないのです。飼育実験をしたところ、若い時期にオニグルミを繰り返し食べることによって、効率的な採食技術が身につくことが分かりました。しかも、そばにオニグルミを食べることができる個体がいることによって、学習効果が高くなることも分かりました。つまり、オニグルミが自生している環境では、母親や周囲の個体がオニグルミを食べている姿を見て、オニグルミを食べる独特の技術を学習していくということです。オニグルミとそれを利用するニホンリスには深い関わりがあり、それが世代を超えて伝わっていくのです。

写真1:まだ、樹上についている緑色のオニグルミの実を房ごとかじり取ります
写真1:まだ、樹上についている緑色のオニグルミの実を房ごとかじり取ります

写真2:オニグルミを食べるニホンリス 
写真2:オニグルミを食べるニホンリス 

写真3:ニホンリスが上手に割ったオニグルミの食べあと 
写真3:ニホンリスが上手に割ったオニグルミの食べあと 

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