今月の自然探訪 > 過去の自然探訪 掲載一覧 > 自然探訪2015年9月 海の近くで見つけた変わったかたちの樹木たち
更新日:2015年9月1日
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今年の夏も例年に増して暑かったですが、涼を求めて海や山で過ごされた方がたくさんいらっしゃったことでしょう。
日本の山では様々な樹木を見ますが、私たちは海の近くでも樹木を見ることができます。自然に存在する樹木もあれば人が潮風や飛砂(砂浜から飛んでくる砂)を抑える目的で植えた海岸の防災林、さらに景観を良くする目的で植栽された樹木などがあります。
ところで海岸の近くは植物にとって生育が容易ではありません。砂地であれば乾燥しやすく、強風が吹くと海からの塩分や飛砂の影響を直接受けます。ここでは通常見られないようなかたちになった、海岸付近の樹木を紹介します。
多数の樹種がありますが代表的なものとして、クロマツ、マサキ、ウバメガシ、カシワがあります。これらは普通の環境であれば他の樹木と比べても特に変わったかたちは見られません。しかし海岸付近で、直接海からの潮風を受けるような場所では大きく変わったかたちになります(図1~4)。
潮風の影響を受けた樹木のかたちに共通することは、枝葉が風下側に伸びていることです。同じ木でも風上側に位置する葉は飛砂や塩分で傷つけられて枯れてしまい、残っていたとしてもその数は僅かです。しかし風下側になると徐々に枝葉の数を増やしています。風上側の枝葉が強風に対して楯となって風下側への影響を少しずつ小さくしているからだと考えられます。
どのくらいの潮風が吹くと樹木のかたちが変形するかについては、よくわかっていません。ただし飛砂や飛来する塩分の影響が大きいと樹木は枯れてしまうことは明らかなので、その対策として防風柵や防風ネットを設置することが推奨されています(図5~6)。
塩分や飛砂など海岸特有の環境と樹木の生理現象・生態変化の関係は今後明らかにしていくべき課題だと考えられます。
図-1 千葉県九十九里海岸
図-2 千葉県九十九里海岸
図-3 愛知県渥美半島(伊良湖岬付近)
図-4 愛知県渥美半島
図-5 茨城県波崎海岸
図-6 茨城県波崎海岸 堆砂垣と防風柵
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