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更新日:2023年2月3日

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自然探訪2023年2月 森の空間を楽しもう

森は、人間の生活に関わる多くの資源を私たちに提供してくれます。最近では資源だけではなく、森の空間そのものを活用しようとする動きがあります。そこには自然観察、登山、キャンプ、スキーなどの古くからあるものに加え、多様なアクティビティが提案されています。

森の空間の活用のひとつとして、森を使った自然共生型アウトドアパークの「フォレストアドベンチャー」があります。これは、日本では比較的新しいアクティビティです。森の樹を活用し、登ったり、樹冠近くに張り巡らされたロープを渡ったりと、スリル溢れるアスレチックを楽しむことができます。

もっと気軽に楽しむことのできる森のアクティビティといえば、グランピングでしょう。これはGlamorous(魅力的な)とCamping(キャンプ)から作られた造語です。従来のキャンプは、テントを運び組み立て、薪を組み、焚き火で調理し……と、その手間を楽しむ一方で、装備の調達や技術の習得などと、初心者からみるとハードルは高いかもしれません。グランピングは、テントや食材、グリルオーブンなどが用意されており、手ぶらで行くこともできます。都市からほど近いところにあるのもポイントで、森林総研のあるつくば市でも、市街地から車で30分も走ればグランピングを体験できるところがあります。そこには、テントの中には、ベッドやソファ、エアコンまで完備されていました。さらに、キッチンや風呂、水洗トイレもテントに併設されており、初心者や幼児連れでも安心して楽しむことができます。管理者さんに聞いてみたところ、「実感としては、お客さんの8~9割がキャンプ初心者」ということでした。

将来的な日本の人口は、都市部にさらに集中すると予想されています。都市部に住んでいるとどうしても森との接点が少なくなる傾向にあります。森に触れる機会が少ないと、その関心が薄れ、いずれ利用する機会もなくなってしまうかもしれません。そしてこのことは、遠からぬ未来に多数派になるかもしれません。我々のように森林に関わる仕事をする身としては、これは流石に寂しく思います。そこで、我々は「森林無関心予備軍」とも言える人々を、いかにして森の利用に繋げられるか、というところに注目して研究しています。

こうした時代の、森の空間を活用するための入り口は、今現在どうなっているでしょうか。「どこかにお出かけを」と考えた時に、皆さんがまず頼りにするのはWEB検索かもしれません。我々は、このような興味から、2022年の夏シーズンに開催された約4000件のイベント情報について調べてみました。「森」と関わりのあるイベントは約100件(全体の2.5%ほど)と多いとは言えませんでしたが、その中身を分類すると、(1)森の自然空間を直接活用し、生き物観察や景色を楽しむ散策、(2)森の素材を活用し、木工やクラフトを制作する教室、(3)森を場の背景として活用し、マルシェや音楽ライブを楽しむ野外イベント、(4)森のキャンプ場を拠点とし、リフレッシュやスポーツの場としての活用、(5)ライトアップ等と合わせてSNSへの投稿を行う利用、と大きく5つのパターンがあるようでした。この中では、マルシェや野外ライブ、SNS映えを狙った撮影は参加のハードルが低かったように思えました。

身近なものからで構いません。日々の暮らしを楽しくするスパイスのなかに、少しでも「森」を加えて頂ければ嬉しく思います。

(森林管理研究領域 小田 龍聖)

写真1:自然観察 五色沼自然探勝路
写真1:自然観察 五色沼自然探勝路(磐梯朝日国立公園)

写真2:森を活用したアスレチック フォレストアドベンチャー
写真2:森を活用したアスレチック フォレストアドベンチャー(長野県長野市)

写真3:森を一望できるグランピング施設からの眺望
写真3:森を一望できるグランピング施設からの眺望(茨城県土浦市)

写真4:樹々を背景に野外ライブ
写真4:樹々を背景に野外ライブ

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