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ホーム > 公開情報 > 法定公開情報 > 環境への取組 > 森林研究・整備機構 環境報告書2023 > 社会貢献活動への取組(地域社会との共生)

更新日:2023年9月29日

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社会貢献活動への取組

地域社会との共生

関東地区における取組

多摩森林科学園

コロナウイルスによる制限からの活動再開

2022年度はコロナウイルスの影響で中止していた様々なイベントを再開しました。森林総合研究所の研究成果を研究者が分かりやすく解説する「森林講座」は人数制限をしながらも6月から2月に8回(うち2回はYouTubeによる配信)開催し、「特別観察会」は「冬虫夏草観察会」と「森を守るための植物観察」を7月に開催しました。平日の午前に開催する公開エリアの「ガイドツアー」も5月から再開し、科学園の四季を解説しています。
科学園には約1,800本のサクラがあり、サクラの季節には地元だけでなく遠くからも来園者を迎えサクラを楽しんでいただいています。コロナウイルスの感染拡大防止のため入園を中止した2020年度は入園者が0人でしたが、通常開園に戻した2022年度は2万2千人を超える来園者がありました。

多摩森林科学園内で休憩する来園者の写真

サクラの下で一休みする来園者

地域とのつながり

科学園の豊かな自然は環境教育等に活用されています。2022年度は、都内の学校を中心に約300名の園児・生徒が学習入園として利用しました。また、視覚障害者が森林に親しむ「視覚に障害のある方のためのガイドブック」を作成しました。活用方法が障害者教育関係者に関心を持たれており、今後、実践を踏まえてバージョンアップする予定です。この他に、科学園は市民団体による観察会や調査地、林野庁や地元自治体職員の研修の場としても活用されています。
地域課題を解決する取り組みの一つに野生動物への対応があります。神奈川県で分布拡大が問題になっているクリハラリスについて、研究者、行政関係者、学校、NPOなどが集まり、広く市民からもクリハラリスの生息情報を収集・共有化し、効果的な捕獲対策につなげるため、「クリハラリス情報ネット」を組織化しました。
今後も研究成果を広く国民の皆様の理解を深めていただくための普及・広報活動を行うとともに、樹木園・試験林・サクラ保存林等を活用し、研究資料の提供や研鑽の場として役割を果たしていきます。

ウェプページの図
「クリハラリス情報ネット」のトップページ(外部サイトへリンク)

森林整備センター関東整備局

2014年4月に群馬県桐生市で発生した山火事により191haの森林が焼失しました。被災面積が大きく地元の群馬県及び桐生市だけでは早期復旧が困難であったことから、被災直後から関係者が集まり早期復旧に向けた打合せを行い、概ね面積の半分にあたる90haは森林整備センターが分収造林事業で対応することとしました。
2016年度から2021年度まで、6年間の歳月をかけ植付作業が完了し、山火事跡地は現在、針広混交林へ生まれ変わりつつあるところです。
また、森林整備センターでは今回の山火事跡地復旧事業の実施をきっかけとして、復旧・再生の効果について、森林総合研究所の研究者と連携して最新の情報通信技術(ICT)を活用しながら継続調査を行い確認していくこととしました。

植栽を完了させた山の写真
植栽完了状況

 

ICTを活用し復旧させた取り組みの説明の図1 ICTを活用し復旧させた取り組みの説明の図2
ICTを活用し復旧させた取り組みの説明の図3 ICTを活用し復旧させた取り組みの説明の図4
森林総合研究所の研究者との連携及び最新の情報通信技術(ICT)を活用した調査

 

この復旧事業では地元の群馬県及び桐生市と地域社会との共生が図られたこと、復旧に森林整備センターの技術力を発揮できたこと、復旧・再生効果の確認を森林総合研究所の研究者と連携して行うことにより調査データに基づいた今後の検証方法を立案できたことなどから、この取組を林業関係者のみならず広く一般に周知するため、取組の内容を取りまとめるとともに、以下のとおり各種のPR活動を行いました。

1.講演会(群馬県桐生市)

対象:森林整備センター職員及び地域林業関係者(62名参加)

講演会の写真1 講演会の写真1
講演会の様子
2.関東森林管理局森林・林業技術等交流発表会への参加(Web)

対象:地域の林業関係者、一般市民

オンラインによる交流会の写真1 オンラインによる交流会の写真2
交流会発表の様子
3.会員誌「森林技術」への記事の掲載

対象:全国の林業関係者

森林技術記事の図
「森林技術」記事
4.取組内容を紹介した小冊子の作成・配布

対象:地域の林業関係者、住民

小冊子表紙の図
配布した小冊子

 

PR活動が新たな「地域社会との共生」の輪をつくりはじめました。

地域イノベーション

岩手県平庭高原における白樺林再生に向けた取り組み

岩手県久慈市山形の平庭高原一帯の森林は「日本一の白樺美林」と称され、地域の重要な観光資源にもなっています。この白樺林は、主に昭和初期まで続けられていた放牧地が放棄され、先駆樹種として侵入した陽樹※のシラカンバが育って成立したものと考えられているのですが、それらの木では老齢化による衰退が顕在化しつつあり、また陽樹であるシラカンバが衰退すればその後は陰樹※のブナやミズナラの林になることが予想されます。シラカンバを主体とする景観を維持するには、適度な人為的管理を加える必要がありますが、具体的な方針は明らかではありませんでした。
東北支所では、2021年度より久慈市からの「平庭高原白樺林再生に向けた技術指針の策定」に関する研究委託を受け、岩手大学、岩手県立大学とも協働して、シラカンバの更新・成長を促進する技術や、老齢シラカンバの樹幹腐朽状態の把握等に関する研究をすすめてきました。現地調査や文献調査により得られた情報は委託元への報告書に取りまとめるだけでなく、折あるごとに現地検討会や成果報告会を開催して、地元への成果の還元を図っています。
受託研究では、陽樹であるシラカンバの更新を図るための方法として、一定以上の面積での森林伐開と林床の掻き起こし処理を提案するなどの具体的な技術指針を、2023年度中に取りまとめ、報告することとしています。しかし、森林の伐開を伴う更新施業では環境や生物多様性への配慮が必要ですし、保安林をはじめとする各種制度との整合性を保ちつつ、地元の理解も得ながら実施していかなければなりません。また、技術指針自体も、新たな科学的知見を取り入れ、今後も適宜バージョンアップしていく必要があります。東北支所は、平庭高原での白樺林の景観を維持するための地域の取り組みに寄り添った活動を継続してまいります。

※陽樹 日当たりのよい環境でよく育つ樹木
※陰樹 日陰の環境でも育つ樹木

平庭高原試験地の写真
平庭高原で森林の伐開によるシラカンバの天然更新促進効果を調べるために設定された試験地

 

令和4年度白樺再生事業成果報告会の様子の写真
「令和4年度白樺再生事業成果報告会」(2023年3月10日、平庭山荘)の様子