成長に優れた苗木を活用した施業モデルの開発

優良苗活用プロ ページ項目:  

HOME

  |  

各課題概要

  |  

各課題成果

  |  

関連リンク

ここから本文です。

課題3:成長に優れた苗木による施業モデルの構築

LEVonSDeM:密度管理図に基づく土地希望価値(LEV)基準判定

このプログラムは

LEVonSDMイメージ

図: LEVonSDM イメージ

虫めがねアイコン 画像をクリックして拡大

このプログラムは、 西園ら (2013) をベースに樹種・地域別の密度管理図を作成し、初期植栽本数および目標樹高を与えた際の材積・個体密度・収量比数を計算します(密度管理図パート)。また目標樹高時に収益が最大となる植栽本数や、 宇都木・久保山 (2021)に基づいたLEV※ベースの収益判断情報を出力します(LEVパート)。

※LEV(NPV)とは、林業純益に経営のリスクを見こした値であり、林業への金融投資の指標となる値です。NPVは一時点での価値判断指標、LEVは将来にわたる価値判断指標であり、安定的な林業経営のためにはLEV・NPVがプラスの値をとるような管理方法を検討する必要があります。

LEVonSDeM を開始

背景

健全な森づくりには間伐は欠かせません。従来の林業では、間伐により立木の形質を整え、立木の価格を高めることに加え、間伐を通して森林の多面的機能の発揮を維持してきました。しかし昨今では、エンジニアウッドの需要の高まりや外国産材との競合のために立木の形質による価格の差は小さくなり、森林経営に際しては森林材積の多寡の重要性が相対的に高まっているといえます。そしてこれまでの研究から、間伐材と主伐材を合わせた材積は、無間伐で育てた最終収量と大きく変わらない事が解っています。

そこで密度管理図をベースとして、目標とする樹高において、無間伐条件かつ伐出純益(立木価格)と苗木価格を考慮した場合に収益が最大となる林分材積と植栽本数を推定し、さらに土地希望価格(LEV)の考え方に基づいた収益性のポテンシャル(最大値)を計算するプログラムを開発しました。このプログラムでは間伐の実施は考慮しておらず、算出される値はあくまで対象林分のポテンシャルを想定したものとなります。ですので、まずは本プログラムを用いて対象とする林地における施業コストや土地の質から収益性のポテンシャルを算出し、森林経営管理制度で謳う「林業経営に適した森林」の判断の足がかりとしてご利用頂ければと考えています。また、本プログラムの入力パラメータである苗木価格や施業コストの内訳として「補助金」を計上し、これらのコストをどの程度に保てば土地収益性が見込めるか検討することも可能です。さらに将来的には、間伐の実施に伴う森林の健全性を、割引率決定のための評価指標として利用することも考えられます。

使い方

I. 密度管理図パート

  1. 選択ウィンドウから樹種、地域を選択することで、該当する樹種・地域における密度管理図を表示します。
  2. 植栽本数スライダーと樹高スライダーを操作することで、任意の本数を植栽した場合の設定樹高時における林分材積、個体密度、収量比数が「密度管理図概要」に出力されます。また、密度管理図中の該当位置に☆マークが表示されます。
  3. 植栽本数スライダーを固定して樹高スライダーを動かすことで、林分の成長や成長に伴う収量比数の変化を擬似的に再現できます。
  4. 樹高スライダーを固定して植栽本数スライダーを動かすことで、間伐による密度低下とそれに伴う収量比数の変化を擬似的に再現できます。

II. LEVパート

  1. 密度管理図パートで設定した樹高と、伐出純益スライダー・苗木価格スライダー・育林コストスライダーを操作することで植栽本数と林業収支の関係グラフを表示します。

    (個別のグラフ・表は、タイトル右横の三角形をクリックすることで表示・非表示を切り替えることができます)

  2. 伐出純益スライダーの左は伐採・搬出・運搬経費、右は丸太価格とし、その差額が立木価格(右に表示)になります。
  3. 苗木価格スライダーは、苗木価格を一本あたり 0 ~ 3000 円の範囲で設定できます(※ スライダーで設定できるのは200円までですので、それ以上は右側の数値を直接増減させてください)。なお、苗木価格が0円以外に設定されていると、密度管理パートで推定された最適密度に従った苗木コストがLEVパートの育林コストに加算されますので、育林コストスライダーのみでコストを指定したい場合には苗木価格を 0円に設定してください。
  4. 育林コストスライダーの左は補助金があればその値、右は実経費とし、その差額が森林経営者の育林コスト(右に表示)になります。
  5. 密度管理図パートで設定した樹高に対して最大の林業純益(伐出純益 - 造・育林コスト)が得られる植栽本数(最適植栽本数)と造・育林コストがグラフ中に示されます。

    • 最適植栽本数は、伐出純益(立木価格)と苗木価格によって変動します。これは図中の収益が植栽密度に対して直線関係とはならないためです。一方、植栽密度と造・育林コストは直線関係なので、収益と造・育林コストの差分の相対的な大小は、立木価格と苗木価格に影響されます。最適植栽本数の時の材積を知りたければ、密度管理図パートで植栽本数に最適植栽本数を入力してください。
  6. グラフ中の収益が造・育林コストを超えた時点で、林業純益が最大となる収益とその際の材積、および造・育林コストがグラフ中に表示されます。また、グラフ下部の「LEVに基づく収益判断」 欄に林業純益とLEV(土地希望価)がプラスとなる MAI(平均年成長量)の閾値(必要最低限の年平均成長速度)が表示されます。
    • スギのMAIは、全国平均で約10-12m3/ha/年、最大で29m3/ha/年の記載がありますが、常識的には5~20m3/ha/年の間にあると考えられます。この範囲になるよう(または施業したい林地のMAIになるよう)にまずはMAIスライダーを設定し、そのうえで各コストスライダーを動かせば、LEVの観点から収益がプラスとなるために必要なコストと現実のコストの差をイメージすることができます。
  7. 「LEVに基づく収益判断」に欄には、さらに設定したMAIの際に目標材積まで到達するのに必要な年数(輪伐期年)、内部収益率(IRR)、およびNPVとLEVが表示されます。ここでIRRは、割引率を0%としたときの値であることに注意してください。MAIの閾値を下回るようにMAIスライダーを設定した場合、土地期望価はマイナスとなり、投資対象とはなりえないことを示します。この際に伐期(輪伐期)も表記されますが、土地期望価がマイナスなので意味はありません。
    • 苗木価格スライダーは植栽本数に依存する造林コスト、育林コストスライダーは植栽本数に依存しない造林コストを想定しています。たとえば、施肥・単木保護資材などのコストを苗木価格として読み込むことも可能です。 (注: グラフ中の造・ 育林コストが植栽本数増加につれて増加するのは、苗木の価格によるものです。 植栽後のコストは植栽密度に依存しないとしています)
    • LEVパートでは、目標材積を直接設定できるようにはしていませんが、密度管理図パートの樹高を調整することで目標材積を間接的に設定できます。このプログラムはデフォルトでは林地のポテンシャルとしての材積を計算しますので、収量比数がとても高くなります。現実的な収量比数の範囲での材積を考慮する場合には、植栽本数スライダーを最適植栽本数に固定したうえで樹高スライダーを操作することで、収量比数を指標とした目標材積でのNPV, LEVを算出することが可能です。
  8. LEV計算に関わる他のパラメータとして、割引率(0~2%)、造材歩留(0.1~1)の設定も 可能です。なお、 割引率0%の時には、 NPV = 林業純益、 LEV=∞ となります。

免責事項など

本プログラムを用いて得られた利益または損害に関して、作者ならびに(国研)森林総合研究所はいかなる責任も負いません。利用に関しましては、自己責任でお願いします。