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小課題1で開発される初期成長に優れた苗木をより効果的に活用できる場所(立地)を抽出するため、立地に応じた苗木の種類(樹種・系統)ごとの樹高および樹冠幅の初期成長ポテンシャルを明らかにする。立地評価については、気象条件や地質等の林分間比較による地域性を評価する広域立地指標と、斜面位置、土壌型、A層の深さ、含水率および光環境等の林分内比較による現地立地指標を組み合わせ、成長ポテンシャルを評価可能な指標を抽出する。また、実行課題3-(2)と連携しながら異なるデータソース(国土数値情報、航空機LiDAR、UAVによる可視光のSfM等)とメッシュサイズのDEM(数値標高モデル)から地形指標を算出し、現地調査の結果と比較し、GISで利用可能な指標についても検討する。さらに、多くの林地は再造林地であるため、伐採(主伐)前の樹高から地位指数を求め、10年生までの初期成長ポテンシャルとの関係を解析し、伐採前の樹高情報の利用可能性についても明らかにする。これらの結果から、林業現場で活用可能な現地立地指標およびGISから推定可能な立地指標の策定を目標とする。
1.スギエリートツリー、特定母樹等を植栽した試験地において、植栽木の樹高および樹冠幅を測定し、初期成長ポテンシャルを把握する。
2.土壌A層深等の立地指標を測定するとともに、UAVを活用して植栽木の精密な位置を得てDEMから地形指標を算出し、植栽木の立地指標を把握する。
3.実行課題2-(2)および3-(2)と連携しながら、苗木の初期成長と立地指標との関係を解析し、植栽木の初期成長特性を評価するための立地指標を抽出する。
実行課題2-(1)で示された各系統や樹種ごとの成長特性をもとに、植栽木と雑草木の競合関係を明らかにし、成長に優れた苗木を用いた際の下刈りスケジュールおよび最適な植栽密度、さらには面的な下刈り判断の手法および基準を提示する。
1.植栽木の樹高成長抑制は、植栽木の樹冠が周辺の競合植生に埋もれた時に顕著となる。造林地に発生する植物は様々なため、広域多点にわたる競合状況調査を実施し、造林地に発生する植生の類型化を行い、植栽木の競争相手となる競合植生のタイプを明確にする。また、競合植生の成長速度を明らかにしたうえで、類型化された競合植生タイプごとに、下刈りの判断基準を明らかにする。さらに、実行課題2-(1)で提示される立地指標に応じた系統ごとの苗木の成長を想定した植栽木と雑草木の競争モデルを構築し、植栽木の成長ポテンシャルや苗木特性に応じた下刈りスケジュール(回数)の提示を行う。
2.近年、植栽コストを抑えるため低密度で植栽する事例が増えているが、植栽間隔が広がることで林冠閉鎖までに時間を要し、下刈り回数や蔓切り作業の増加が懸念される。そこで、樹高と樹冠直径の関係を調査し、植栽密度と林冠閉鎖のタイミングを明らかにする。実行課題2-(1)から植栽木の系統ごとに樹高と樹冠幅の関係、樹冠拡大速度の提供を受け、樹冠成長モデルを構築し、下刈り省力化の観点から評価した植栽密度を明らかにする。
3.造林地内の雑草木の組成や成長は不均質であり、面的な広がりを示す一つの造林地として、下刈りの要否の判断は難しい。そのため、UAV空撮で得られた画像の解析を通じて造林地内の植生や植栽木と雑草木の競合状態を面的に把握する技術を開発する。
通常の下刈りより高い位置での刈り払いや、植栽木の周辺雑草木を部分的に刈り残すといった下刈の工夫で、植栽木の成長を維持しながらシカ食害を軽減する方法を検証する。その際、成長の良い品種を使えば梢端がシカに食害されない高さに早く到達する可能性が高いことから、刈り残した雑草木による被圧と植栽木の成長の関係を明らかにする。(略称:高下刈課題)
さらに、シカによる採食を受けにくいとされる「雲外」や「中源3号」といったスギ品種のシカ被食性を検証する。シカが忌避しているのであれば、その形質を精英樹に取り込むことを目的とした交配を行い、野外での検証試験を行う。
また、早生樹として期待されているコウヨウザンに対しては、ノウサギ(野兎)による被害が大きいとの指摘がある。通常の防鹿柵では野兎の造林地への侵入防止は困難であるため効果的な野兎害対策手法を提示する。
1.地際付近で刈払う「普通下刈」、膝くらいの高さで刈払う「高下刈」、下刈りを省略する「無下刈」を実施して、刈払いの作業効率やスギの樹高成長を測定するとともに、シカ食害の発生を記録し、シカの餌資源となる雑草木を林地に残す「高下刈」の効果を明らかにする。
2.スギの複数系統の苗(実生・さし木)を植栽してシカ食害を記録する。系統によって食害の程度が異なるのかを統計的に検証する。
3.忌避剤や単木保護資材を使った食害防止効果に加えて、大苗植栽や雑草木の刈り残しによる被害軽減効果などを検証する。
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