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更新日:2012年7月2日

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自然探訪2012年7月 振動によるカブトムシの対話

振動によるカブトムシの対話

カブトムシといえば誰でも知っている代表的な夏の昆虫です(写真1)。成虫は樹液をエサにしていますが、幼虫は腐葉土を食べます。成長した幼虫は土中に蛹室という部屋をつくり、その中で蛹になります(写真2)。しかし、幼虫は高密度の集団で生活するため(写真3)、蛹室がまわりの幼虫によって壊されるおそれがあります。蛹室が壊されると、中の蛹がうまく成虫になれず、死んでしまいます。そこで蛹は、近づいてきた幼虫に対し、背面を蛹室の壁に打ちつけることでバンバンバンというような振動を発します(図)。一方、幼虫は、蛹の振動を感じると動きを完全に止めるので、蛹室に近づけません。このように蛹は振動を発することで、幼虫によって蛹室が壊されることを防いでいます。それでは、なぜ幼虫は振動によって動きを止めるのでしょうか?実は蛹の発する振動は幼虫の有力な天敵であるモグラが発する振動によく似ているのです。振動を感じて動きを止めるのは、天敵を避けるうえで有利になるという理由から、幼虫にもともと備わっていた習性といえます。カブトムシの蛹はこの性質を逆手にとって、天敵の振動を真似て幼虫を欺き近づけないようにしているのでしょう。カブトムシの成虫をご覧になる機会がありましたら、土中にいる蛹と幼虫の振動による対話を想像してみてください。

写真1:樹液を吸うカブトムシの成虫
写真1: 樹液を吸うカブトムシの成虫

写真2:蛹室中の蛹(東京大 小島渉氏撮影) 
写真2: 蛹室中の蛹 (東京大 小島 渉氏撮影) 

写真3:腐葉土中の幼虫の集団(東京大 小島渉氏撮影) 
写真3: 腐葉土中の幼虫の集団 (東京大 小島 渉氏撮影) 

  図:蛹の発する振動
図: 蛹の発する振動

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