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更新日:2013年12月2日

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自然探訪2013年12月 シイノキ

シイノキ

シイノキというのはブナ科シイ属の樹木の総称です。日本にはスダジイCastanopsis sieboldii(別名ナガジイ、イタジイ)、コジイC. cuspidata(別名ツブラジイ)の2種と、スダジイの変種であるオキナワジイC. sieboldii ssp. lutchuensisの2種1変種が分布しています。スダジイとオキナワジイは佐渡島から波照間島まで海岸沿いを中心に広く分布し、大きく長い堅果をつけます。コジイは関東以西の太平洋側のやや内陸を中心に分布し、丸く小さな実をつけます。スダジイとコジイを別種とするか変種とするかについては長らく意見が一致しませんでしたが、現在では別種と言うことになっています。しかし、両者の間には中間型も多く、その境界は未だに明瞭ではありません。現在はDNA分析などによる研究が進みつつあるため、今後新しい知見が出てくることが期待されます。シイノキは暖温帯の照葉樹林を代表する極相種で、寿命も長く、大木になるため、巨樹として知られるシイノキも各地に存在します。また、萌芽による再生能力が高いため、ある程度の伐採が繰り返されるとしばしば純林を形成します。しかし、種子の散布能力が低いため、一度失われると再生には長い年月を必要とします。

木材として家具や建材などに使われるほか、シイタケのほだ木としても利用されています。樹皮からはタンニンが取れ、漁網の防腐剤や着物の染料としても利用されています。また、あく抜きなしで食べられる数少ないドングリの一つで、生で食べてもほのかに甘く、かつては重要な食料でした。特に稲の伝来以前は重要な澱粉源だったと考えられ、縄文遺跡から出土しているほか、江戸時代に至っても、飢饉などの際に椎の実を食べたという記録が残っています。

このようにシイノキは古くから人間の生活に関わってきたなじみ深い木です。

現在でも街路樹や公園樹として植えられることが多いため、街中で見かける機会も多いと思います。椎の実を拾ったら、縄文時代に思いを馳せつつ口に入れてみるのも良いのではないでしょうか。


写真1:スダジイの葉の表側
写真1:スダジイの葉の表側

写真2:スダジイの葉の裏側
写真2:スダジイの葉の裏側

写真3:スダジイの実と殻斗
写真3:スダジイの実と殻斗

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