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更新日:2014年10月1日

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自然探訪2014年10月 ツキヨタケ

ツキヨタケ(Omphalotus japonicus)

ツキヨタケ(Omphalotus japonicus)は、その名前のように昔から光るきのことして知られています。主にブナの枯れ木に生えますが、イタヤカエデに発生することもあります。傘は濃褐色で、大きいものでは20cmに達します。褐色の短い柄が傘の横側か中心からずれた位置につきます。この柄にはツバがあり、肉には黒いシミがあるのが特徴です。ツキヨタケは日本の代表的な毒きのこです。毒成分はイルージンSなどで、食べると嘔吐、腹痛、下痢などを起こします。シイタケ、ヒラタケにその形が似ているため、間違えやすく、日本で最も中毒件数の多いきのこです。地味な色で食べごたえのある美味しそうな外観をしているため、食べてみる人が多く、平成19~25年には厚生労働省が把握しているものだけで118件のツキヨタケによる食中毒が起きました。これは、日本のきのこ中毒全体の3割を占めています。ツキヨタケは発光きのことしても有名です。暗い場所でないと気づかない程度のことが多いのですが、新鮮な時はその光で本が読めることもあるようです。日本の毒きのこの中でも古くから知られ、今昔物語ほか多くの文献に登場します。江戸時代の図入り百科事典の和漢三才図会には、「ブナの木に生えるきのこ、光るきのこは毒」との記載がありますが、これはツキヨタケのことをさしているようです。ツキヨタケは日本特産ですが、近縁種Omphalotus oleariusは欧米に分布し、オリーブの木に生えます。同様に光る毒きのことして知られ、昆虫記で有名なファーブルも記録を残しています。このきのこは、ツキヨタケとは形が異なり、柄が発達したロート形をしているため、長らく別属とされてきましたが、DNA解析の結果、同じ属として扱われることになりました。

 


写真1:ツキヨタケ横から
写真1:ツキヨタケ横から


写真2:ツキヨタケ群生
写真2:ツキヨタケ群生

写真3:ツキヨタケ断面
写真3:ツキヨタケ断面

 

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