今月の自然探訪 > 過去の自然探訪 掲載一覧 > 自然探訪2024年8月 本州脊梁山脈の日本海側の雪山にみられるミヤマナラ

更新日:2024年8月5日

ここから本文です。

自然探訪2024年8月 本州脊梁山脈の日本海側の雪山にみられるミヤマナラ

ミズナラは、日本の冷温帯の山地林の主要な落葉樹で、林冠に達する高木です(写真1)。一方、ミヤマナラは、本州脊梁山脈の日本海側の山岳の亜高山帯に分布します。ミヤマナラは、ミズナラの変種とされ、幹が根元で分岐して匍匐し低木状となり葉は小さく(写真2)、葉の裏面には毛が密生します(写真3)。このような形態により、多雪地域の高山では避けることのできない吹雪や雪崩への耐性を持つと言われています。

日本列島では、日本海を渡る冬の季節風によって日本海側に多くの雪が降ります。その多雪環境に適応したさまざまな植物がみられ、太平洋側に分布する近縁種と区別されます。樹木では、ヤブツバキに近縁なユキツバキやユズリハに近縁なエゾユズリハなどがその例です。これらの常緑樹は寒さに弱いのですが、雪に埋もれることによって冬の厳しい寒さから保護されます。ユキツバキやエゾユズリハは低木状で多雪環境に適応しており、ヤブツバキやユズリハからそれぞれ遺伝的に分化しています。

青森県の八甲田山から長野・富山県の白馬岳にわたる山岳のミヤマナラを調べたところ、ミズナラから遺伝的に分化していることがわかりました。日本海側に特有な多雪環境が適応進化をもたらし、日本列島の植物の多様性を豊かにしてきたのです。

 

(樹木分子遺伝研究領域 永光 輝義)

写真1:高木となるミズナラ
写真1:冷温帯の山地帯に分布し高木となるミズナラ
ミズナラは、日本の冷温帯の山地林の主要な落葉樹で、林冠に達する高木です。

写真2:低木状となるミヤマナラ
写真2:日本海側の山岳の亜高山帯に分布し低木状となるミヤマナラ
ミヤマナラは、本州脊梁山脈の日本海側の山岳の亜高山帯に分布し、
ミズナラの変種とされ、幹が根元で分岐して匍匐し低木状となります。

写真3:葉の裏面の拡大
写真3:葉の裏面の拡大。左がミズナラ、右がミヤマナラ
ミヤマナラの葉の裏には、ミズナラと異なり、毛が密生します。

 自然探訪 前の月へ自然探訪 次の月へ

過去の自然探訪掲載一覧はこちら

お問い合わせ

所属課室:企画部広報普及科

〒305-8687 茨城県つくば市松の里1

Email:QandA@ffpri.affrc.go.jp