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更新日:2021年11月5日

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令和3年度理事長賞

令和3年11月1日、森林研究・整備機構創立116周年式典において、以下のとおり理事長表彰を行いました。

業績名

漆文化の継承と発展を目指した国産漆の増産、利用技術の開発と普及に向けた活動

受賞者

田端 雅進(東北支所 生物被害研究グループ 研究専門員)

橋田 光(森林資源化学研究領域 樹木抽出成分研究室長)

受賞要旨

受賞者は、国産漆の増産や利用拡大を目指した分野横断的な研究プロジェクトを推進した。さらに、日本の漆文化の継承・発展に向け、異分野との情報交換の推進に向けて、「漆サミット」を開催し、地域に根づいた伝統文化や産業の維持の重要性に関しての情報発信を行うとともに、「日本漆アカデミー」を立ち上げ、国産漆の普及啓発に向けての活動母体とした。国産漆は、国宝や重要文化財の保存や修復などに塗料や接着剤として用いられ、日本の伝統文化の維持に欠かせないものであり、受賞者らの功績は、我が国の漆文化の継承、地域の漆産業の発展に貢献した。

業績名 医学分野と連携した「森林及び木質材料と健康の関わり」に関する研究
受賞者

森田 恵美(森林管理研究領域 環境計画研究室 主任研究員)

受賞要旨

令和3年に制定された森林・林業基本計画には、これまで森林に期待されてきた木材生産や公益的機能の他に、森林と社会の境界領域である「新たな山村価値の創造」が加わった。ここでは、健康・観光・教育など様々な森林空間を利用する「森林サービス産業」を活用して地域の内発力を高めていくと記載され、多様な森林空間利用という新たな付加価値の創出が求められている。受賞者は医学分野とクロスアポイントメント制度で連携しながら研究を行い、「森林浴習慣による労働者のストレス対処力の向上、木材の住環境と睡眠との関連等、森林及び木質材料の良さ」に関する科学的エビデンスとなる研究成果を挙げた。これらの成果は森林及び木質材料と健康の関わりに関する研究の発展に大きく貢献した。

業績名

森林経営管理制度における森林保険の活用促進について

受賞者

福本 浩一(森林保険センター 保険業務部 上席参事)
寺田 英司(森林保険センター 保険総務部 参事(保険業務部併任))
藤井 栄梨子(森林保険センター 保険業務部 保険推進課加入促進係長)

受賞要旨

森林経営管理制度は令和元年度に開始された国の制度である。本制度の適切な運用には、森林保険による自然災害リスクへの備えが必要であり、森林保険センターでは制度開始の前年からこれまでの間、都道府県や市町村等の関係者に森林経営管理制度における森林保険の活用等について説明を行った。その結果、本年7月末現在、経営管理権集積計画を作成・公告した157の自治体のうち110の自治体において森林保険に関する記載がされ、20の自治体及び2の林業経営者と森林保険契約を締結することができた。この取組が森林保険の普及・加入促進に大きく貢献したとして、第4期中長期目標期間の法人評価Aにつながったことから受賞者の功績は高く評価できる。

業績名 若齢造林地におけるニホンジカ被害対策高度化への貢献
受賞者

野宮 治人(九州支所 森林生態系研究グループ 主任研究員)
山川 博美(九州支所 森林生態系研究グループ 主任研究員)
大谷 達也(四国支所 チーム長)

受賞要旨 人工林資源の充実で主伐と再造林が進む一方で、再造林の成否には増えすぎたシカの影響が大きく、その被害防除が課題となっている。本研究においては、一般的な被害対策である「防鹿柵」と比較しながら、まだ普及していない「単木保護資材」や「大苗利用」の実態と課題を科学的に検証し、シカ存在下の初期保育ポイントを取りまとめるとともに、被害対策が機能するかどうかの判断材料となるよう、その場所のシカの痕跡(フィールドサイン)を使ってシカの生息頭数や被害リスクを評価する簡易な方法を開発した。被害リスクの評価は九州森林管理局の協力で有効性の検証を継続中である。成果はYouTube配信やパンフレットで関係各所に配布して橋渡しに努めた。
業績名 「水源林造成事業の施業指針」の作成・配付による森林施業技術の普及
受賞者

森林企画課(森林整備センター)
森林事業課(森林整備センター)
資源利用課(森林整備センター)
森林防災研究領域(森林総合研究所)
植物生態研究領域(森林総合研究所)

受賞要旨

水源林造成業務の森林整備について、昭和36年度から長年培ってきた森林施業の手法等や、森林の公益的機能に関する科学的知見の解説などを、研究開発業務の研究職員の指導及び助言を受けつつ、「水源林造成事業の施業指針」として取りまとめた。
水源林造成事業の関係者(造林者等)のみならず、同等な条件下で森林施業を実施する林業関係者が活用しやすいような記載に工夫がなされているこの指針は、都道府県や林業事業体等に配付するなどにより、高度な技術が必要な針広混交林や育成複層林へ誘導するための森林施業の普及に大きく貢献したことから、その功績は高く評価できる。

業績名 採用活動の強化による優秀な人材の確保
受賞者

江川 哲(森林整備センター 森林管理部 労務課 課長補佐)

受賞要旨 森林整備センター職員採用は年々応募者が減少傾向であったため、高卒採用再開、理系学部への募集拡大と、特に学生等への最初のアプローチとなる採用案内パンフレット作成等に取り組んだ。パンフレットは若手職員1日の仕事、キャリアパス等の紹介や、「森と水と時をつなぐ仕事。」を惹句に、自然に関わり、守り育てる「職員」が主役の業務であることを訴えかけるなど、完成度は非常に高く、攻めの職員採用の起点となった。この結果、年度毎の応募者数が57名、104名、227名と倍増し、面接でも志望者から「『先輩の声』を見て、働いてみたいと強く思った」等の反応が多く見られた。パンフレット作成を起爆剤とした採用活動の対策強化の効果は顕著で、その中心的役割を担った江川職員の人材確保への功績は高く評価できる。
業績名 森林教育分野における先駆的な研究実績
受賞者 井上 真理子(多摩森林科学園 教育的資源研究グループ 主任研究員)

大石 康彦(多摩森林科学園 業務課 研究専門員)

受賞要旨

近年、森林科学分野では学教教育における森林教育の重要性が強く認識されるようになり、森林教育の研究者も増えつつある。候補者らは多摩森林科学園における実践をもとに森林教育研究を推進して体系化した。その成果を公刊図書として発刊したほか、国内の森林関係の学会のみならず、環境教育分野や日本学術会議、IUFROにおいて積極的に発信し、「教育」を森林科学の一分野として確立させることに貢献した。研究蓄積がきわめて少ない状況で、多くの先導的な研究を行って森林教育分野の確立に貢献したことは、今後森林に関する国民の理解を深めていくうえで基礎となる業績であり、その意義は高く評価できる。

業績名

大径材から要求性能に応じた製材品を得るための強度予測技術の開発

受賞者

小林 功(企画部長)
伊神 裕司(木材加工・特性研究領域長)
藤本 清彦(木材加工・特性研究領域 木材機械加工研究室長)
加藤 英雄(構造利用研究領域 材料接合研究室 主任研究員)

受賞要旨

我が国の人工林は高齢級化が進み、大径材の供給が増加しているが、大径材は強度等品質のばらつきが大きいことや安定供給への懸念などから需要者に敬遠されている。
そこで、丸太段階での品質評価や形状測定装置、強度推定手法、大径材丸太の製材技術、断面の大きな製材品の乾燥技術等、大径材から平角や枠組壁工法用部材などの製材品を効率よく得るための技術開発を行った。参画研究機関の緊密な連携によってプロジェクトを推進し、大きな研究成果を得た。得られた成果は、論文8報、学会発表98報として発表するとともに、6回の公開シンポジウムの開催、成果を取りまとめたパンフレットの作成等、成果の公表に積極的に取り組み、大径材の新しい利用技術の普及に大きく貢献した。その功績は高く評価できる。

業績名

森林における放射性物質の動態解明とそのアウトリーチに関する貢献

受賞者

三浦 覚(震災復興・放射性物質研究拠点 研究専門員)
大橋 伸太(木材加工・特性研究領域 組織材質研究室 主任研究員)
橋本 昌司(立地環境研究領域 土壌資源研究室 主任研究員)
小松 雅史(きのこ・森林微生物研究領域 きのこ研究室 主任研究員)
今村 直広(立地環境研究領域 土壌特性研究室 主任研究員)
荒木 眞岳(植物生態研究領域 チーム長)
平井 敬三(立地環境研究領域長)
篠宮 佳樹(震災復興・放射性物質研究拠点長)

受賞要旨

福島第一原発事故後10年に亘り、受賞者らをはじめ複数分野の研究者の協働のもと、森林の放射性セシウム分布と動態の長期観測を実施し、放射性セシウムが森林内に長く留まり一部が循環することを解明した。世界的にも希少な森林に関する環境放射能データベースを国際原子力機関のプロジェクトを通じて世界に公開し、高い評価を得た。さらに、得られた最新の知見を、研究者のみならず、被災地域の市民・事業者・行政機関、都市域に住む市民など幅広い人々に向けて、それぞれに分かりやすい方法で、正確な情報の伝達、政策への助言、事業の提案など多様なアウトリーチ活動を行った。これらの活動は、林業や山村地域における放射能汚染からの復興、再生の歩みに大きく貢献した。

森林研究・整備機構役員と理事長賞受賞者の記念写真
令和3年度(2021年) 理事長表彰 受賞者

 

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