文字サイズ
縮小
標準
拡大
色合い
標準
1
2
3

森林総研トップ

ここから本文です。

年報第41号 試験研究の概要

研究問題XII
先進開発地域の森林機能特性の解明とその総合的利用手法の確立

関西支所では、①森林生態系の特性解明と森林の環境形成・保全機能の増進、②森林資源の充実と林業における生産性の向上、③地域に根ざした林業の発展と森林の多面的利用技術の高度化に重点を置き、次の3大課題を推進している。

大課題1 「風致林・都市近郊林を中心とする森林の機能解明」では、森林と人間との共生及び生物多様性の保全を図っていくという社会的・学術的ニーズに対応する必要があることから、森林植生、動物、土壌、渓流水、景観等を長期的にモニタリングするとともに、森林の有する多面的機能の高度発揮に資する基礎的・先導的研究への取り組みを強化した。

大課題2 「多様な持続的林業経営と施業技術の体系化」では、戦後積極的に行われてきた拡大造林は成熟期を迎え、現在では森林を健全な状態に育成して循環利用させるという行政ニーズに対応する必要があることから、生物害管理技術、及び生産から流通・加工に至る資源の持続的利用に関わる基礎的・先導的研究への取り組みを強化した。

大課題3 「地域森林資源管理手法と森林資源の総合的利用手法の確立」では、森林の有する環境機能、文化機能などの行政的、社会的ニーズに応える必要があることから、ランドスケープエコロジーに基づく森林保全計画策定手法や気候変動が地域森林の炭素固定能などに及ぼす影響解明に関する基礎的・先導的研究への取り組みを強化した。

1. 風致林・都市近郊林を中心とする森林の機能解明

本年度、都市近郊林の生態系機能に関しては、堅果食性キクイムシ類の生態について多くの新知見を得る成果をあげた。またマイクロサテライトマーカーを利用して、断片化した森林の植物の遺伝的構造の特性の解明と集団の有効サイズの決定、ツキノワグマ個体群の遺伝的特性等の解明等、生物保全上有効な手法の確立と貴重な成果を大量にあげた。また動物インパクトが生物間相互作用の動的な過程を通じて森林の更新に重大な影響を及ぼすことを明らかにし、その成果に立って公害等防止研究バイオネットの立案実行へと結びつけ、本格的に自然公園大台ヶ原生態系の維持管理手法確立の研究の端緒を与えた。関西地域の荒廃林地回復のための土壌学的成果、林床植物の土保全機能の評価等、劣悪な都市近郊林保全上の有用な知見を得た。北谷炭素動態観測施設を利用した地形要因と熱収支の関係解明に関わる測定も概ね軌道に乗りつつある。その他の課題もおおむね計画通りの進捗であった。

1). 風致林・都市近郊林生態系の機能解明

(1). 植生回復に伴う土壌発達の初期過程の解明

緑化施工直後の土壌発達過程を明らかにすることを目的に、関西支所構内実験林の斜面にマサ土を客土後に播種を行い、試験地(アカメガシワ区、ヤシャブシ区、アカマツ区、草本区、対照区)を設定した。施工後3年間、成長調査、微生物バイオマスC、全炭素・全窒素含量、採取時含水率および土壌温度の調査を行った。施工後6ヶ月間にバイオマスCの急激な増加が見られ、その後の変動は小さかった。全炭素量は3年間ほぼ一定値で推移したのに対して、全窒素量は3年間漸増傾向にあった。以上のバイオマスC、全炭素・全窒素含量の結果は全区に共通しており、処理区間による明瞭な差は認められなかった。また、バイオマスCは土壌水分、土壌温度、炭素含有率で概ね近似されることが明らかになった。

(2). 広葉樹二次林を構成する種の特性の解析 (→主要成果P15P16)

調査地のうち天然林部分の0.5haでは、93年から99年の間に、幹数は1657本から1514本に減少した一方、胸高断面積は18.86平方メートルから20.47平方メートルに増加した。落葉広葉樹の割合は、本数比で43.5%から37.0%に、胸高断面積比でも54.0%から52.6%に減少した。その一方で、常緑広葉樹が増加している。樹種構成では、落葉広葉樹ではタカノツメの減少が比較的顕著であった。優占度の高かった常緑広葉樹であるクロバイとアラカシとについて実生の消長パターンを比較してみると、クロバイが新規加入と死亡がともに多かったのに対し、アラカシはともに少なく、安定した実生バンクを形成しているものと考えられた。

(4). 野ネズミの越冬生態と個体群維持機構との関連

奈良県大台ヶ原におけるヒメネズミの個体群動態を、堅果生産量との関連から解析した。ブナ堅果の落下量が多い年には秋期の個体数が多く越冬生残率が高い傾向が認められたが、ミズナラの豊作年であっても越冬生残率は必ずしも高くはなかった。堅果消化試験の結果から、ブナ堅果は窒素利用率が70%と高質な餌であるが、ミズナラ堅果は消化率は90%程度と高いものの窒素利用率は約30%と低く、資源としての価値はブナに劣るものと考えられた。

(6). 堅果食性キクイムシの生態

落下後の堅果を最も高率に加害するドングリキクイムシの創設雌は穿入孔ガード行動に多くの時間を費やし、これは同種雌の侵入を防ぐために行うことがこれまでの実験で明らかとなった。しかし、創設後の日数によってガードに成功する割合が変化する可能性があることが示唆された。これを確かめるために、創設後9ないし、21・22日目堅果を野外に設置したところ、9日目の方が創設雌の置換率、ケシキスイやガ幼虫の侵入率が高かった。これは、創設後の時間の経過により、雌の防衛力が強くなるため、または侵入者にとっての資源の質の低下がおこるためと考えられた。

(8). 樹木の水分通導調節による水ストレス耐性機構の解明 (→成果発表会記録P39)

クロマツ成木のキャビテーションに対する感受性は幼齢木の場合とは異なり、樹体各部位の間で明瞭な違いが認められた。地下部の根は地上部に比べて感受性が高く、地上部では当年生枝、1年生枝の順に感受性が低下した。全体として木部径が小さいほどキャビテーションが起りやすい傾向にあるが、部位別に見ると枝ではその傾向は顕著でなく、根でその傾向が顕著であった。さらに、キャビテーション発生は仮道管内径の大きさとの間に明瞭な関係は認められなかった。枝と根の壁孔膜の形態を走査電子顕微鏡で観察すると、根のマルゴの網目は枝のそれに比べてかなり大きいことがわかった。網目が大きいほどキャビテーションは発生しやすくなるので、このことが枝に比べて根でのキャビテーションが発生しやすい主な原因であることが示唆された。

(9). A0層から供給される有機物の蓄積過程の解明 (→主要成果P18)

山梨県、京都府、高知県の7箇所の森林において、テンションフリーライシメータ(溶存有機物;DOM、粒子状有機物;POM、それぞれ3個)をA0層と鉱質土壌の境界に設置し、土壌水を月に1度の間隔で採取し、溶存炭素含量(POMはサイズ分画後に炭素、窒素含量)を測定した。各地点のDOM濃度は採取時期によらず比較的一定であったが、モル地点では2~3倍の経時変動が見られた。 POMは設置直後に大きな値を示し、3反復内でのばらつきも大きかった。POMは200mm以上が9%、200~20mmが68%、20mm以下が23%であった。サイズの大きいものほどC含量とCN比が高く、20mm以下の画分はA層の有機物と似た性質を示した。

(10). マツ穿孔虫類寄生バチの寄主サイズ評価に関する検証

キタコマユバチによる寄主サイズの大小評価が相対的なものであるかどうかを検証するための実験を行った。寄主を生重によって3つのクラス(L、M、S)に分け、1個体の雌バチに2つのクラスを組み合わせて与えた。寄生した次世代を飼育して羽化させ、性比を求めた。この結果、S+Mの組み合わせにおけるMに対する性比(雄率)が0.38となり雌に偏ったのに対し、M+Lの組み合わせにおけるMに対する性比は0.63と雄の方が多くなった。以上の結果から、キタコマユバチの寄主サイズ評価を各雌個体の生涯性比で比較した場合、相対的なものであることが判明した。

2). 都市近郊林の水土保全機能の解明

(2). シダ群落の土壌保全機能の解明 (→主要成果P22)

ワラビの繁殖条件を調査するため根茎長の異なる根茎を苗畑に植え付けた結果、20cm以上の根茎が繁殖に適していることが分かった。京都府山科区の山火事跡地においてワラビ被覆量の季節変化を求めたところ、現存量による被覆が失われる冬期にも、枯死体の蓄積によって約300g/m2以上の枯死体が地表を被覆していると推定された。人工降雨装置による土壌保全機能の評価を行ったところ、約300g/m2以上の被覆量によってワラビ群落の土壌侵食はほぼ抑制されると考えられた。また被覆状態を画像解析した結果、この抑制は被覆面積の増加に伴う雨滴エネルギーの減衰によるものと考えられた。

(5). 森林樹冠上の熱収支における地形要因の解明

森林流域内の地形構造が森林樹冠上の熱収支に与える影響を明らかにするために京都府相楽郡山城町のコナラ・ソヨゴ林に設置した2本の気象観測タワー(尾根部の高さ25m、谷部の高さ35m)において、放射測定と乱流変動法を用いた顕熱・潜熱の測定を行った。その結果、日中は尾根部と谷部の放射収支、顕熱は同様な波形を示すが、夜間は尾根の顕熱フラックスと比較して谷の顕熱フラックスが50w/m2程度低くなり、谷部の方が夜間の放射冷却の進行が速いことが観測され、同一流域内の隣り合う地点においても微地形的な要因で熱フラックスの日変化のパターンが異なることが分かった。

(6). 渓流水中の微量流出元素と有機物との関係の解明 (→主要成果P19)

広域調査によって、渓流は土砂のたまった砂防ダムの通過や湿地を通過した場合に鉄濃度が高くなることが観測された。このことから渓流水中の鉄濃度の上昇には還元状態による鉄の溶出が関係していると推定された。ただし、塩化第一鉄を純水に溶解させた後に、自然の渓流水と同じように中性にすると、溶液中の鉄の大半は沈殿した。そこで、落葉から抽出した溶存有機物を含む溶液で同じ実験を行うと、当初溶存していた鉄の一部が溶液中に残ることが確かめられた。以上の結果より、渓流水へ鉄が溶解する過程では還元条件が必要であるが、酸化条件のもとで鉄が溶存しつづけるためには溶存有機物の存在が必要であると推定された。

(7). 林内可燃物の燃焼特性の解明

森林の火災危険性を評価するためには、個々の可燃物の燃焼特性を明らかにしておく必要がある。今回は、可燃物の燃焼特性を示すパラメータのうち、可燃物の表面積-体積比、比重、無機含有量及び限界含水率を調べた。表面積-体積比の平均値は、落葉広葉樹が165.40cm-1、常緑広葉樹が74.27cm-1、針葉樹が70.44cm-1であった。比重の平均値は、落葉広葉樹が0.39gcm-3、常緑広葉樹が0.43gcm-3、針葉樹が0.52gcm-3であった。また無機含有率の平均値は、落葉広葉樹が0.081、常緑広葉樹が0.082、針葉樹が0.029であった。限界含水率は種によるばらつきが大きかった。

3). 森林の風致及び環境形成機構の解明と評価手法の確立

(6). 農林業及び自然的要因が農林地の景観形成機能に与える影響の解析

季節・天候別の景観評価値の変動、既存の気象データ、および国民のレジャー動態をもとに、落葉樹林、及び常緑樹林の景観形成機能の月変動をあらわすフェノロジーモデルを作成した。このモデルを用いることによって、新緑期には落葉樹林地の景観形成機能評価が常緑樹林地に比べ非常に高くなること、黄変~黄葉期には景観評価の差ほどは落葉樹林地、常緑樹林地間の景観形成機能の差が生じないこと、落葉期には常緑樹林地の機能評価値の方が落葉樹林地よりも高いこと、など森林の季節性が年間の総合的な景観形成機能に与える影響が評価された。

(7). 林内トレイルにおける景観体験評価

調査地として京都大学芦生演習林内の由良川本流下部のトレイルを選定し、写真投影法による調査の妥当性を確保するための予備調査を実行した。その結果、多くの被験者において撮影行動の逓減現象が生じること、撮影ペースの速いグループと遅いグループの分化傾向があること、などが明らかとなった。懸念されたフィルム終盤での使い切り行為は明瞭には観察されなかったが、撮影された写真をより均質で信頼性の高いデータとして扱うためには、出発地からある一定の距離までに収集されたデータを有効とする、あるいは撮影を往路のみに限るなど、対象区間を限定することが有効な手段である。

4). 断片化した森林生態系の維持・遷移機構の解明と保全技術の確立

(1). 森林における鳥類群集の構造と動態のメカニズム

シジュウカラ類3種の密度は、餌である鱗翅目等幼虫が大発生した年にはいずれも変化がなかったが、幼虫が平年時の半分に減少したときに体サイズが最小のヒガラの数が半減した。また餌が少ない年にはヒガラ以外の種が餌の多い樹種を選択的に利用したのに対して、ヒガラは特別な選好性を示さなかった。これらの結果から、餌の少ない年には種間競争がきびしくなり、最も劣位なヒガラの採食が制限され、個体数を減少させたと考えられる。

(2). 動物によるインパクトが森林生態系の構造および動態に及ぼす効果 (→主要成果P26)

ササの現存量の回復にともない、ササの現存量に対するシカの除去の効果および樹木実生の生残に対するササ除去の効果が、2年目になって認められるようになった。またシカとネズミは、直接的には採食により実生に対してマイナスの影響を与えるが、間接的には実生と競争関係にあるササを採食することでプラスの影響を与えていた。表層土壌中のNO3-イオン濃度に対するササ除去の効果は、1年目・2年目ともに認められた。

(5). 断片化した森林生態系の遺伝的構造と更新機構 (→成果発表会記録P39)

断片化した森林内に存在するシラカシとホオノキ個体群で遺伝子交換を解析したところ、どちらの場合もきわめて活発に外部の個体と遺伝子を交換していることが明らかになった。シラカシの例では、稚樹の約半数は片親が、8%は両親とも調査林分の中には見いだせなかった。ホオノキの場合は、35%の稚樹は片親が、40%の稚樹は両親とも調査林分の中にはなかった。すなわち、シラカシの場合、稚樹の世代が持つ遺伝子の33%が、またホオノキの場合は57%が外部の個体から受け継いでいた。森林の断片化がもたらす影響については、こうした遺伝学的な面での評価が必要であるといえる。

(7). 西日本の大型獣類における遺伝的特性の解明

西日本の各府県と協力し、有害駆除などで捕殺されたツキノワグマの標本を収集する体制を整備した。京都府下において回収されたツキノワグマの年齢構成を解析した結果、当地では当歳から22歳までの個体が駆除の対象とされていることが分かった。京都府下において回収されたツキノワグマからDNAを抽出し、15組のマイクロサテライトマーカーを設計した(15遺伝子座に相当)。京都府内で捕獲されたツキノワグマ36個体のDNAを分析した結果、7遺伝子座で多型を確認した。確認された対立遺伝子座数は2~5で、ヘテロ接合体率は各遺伝子座で0.029~0.536だった。この7遺伝子座のうち5遺伝子座では、ヘテロ接合体率は任意交配集団を仮定して求められた期待値(ハーディ・ワインベルクの平衡値)から大きく異なることはなかった。以上の結果からこれらのプライマーはツキノワグマ個体群の遺伝学的な構造や個体間の血縁度の推定に有用であることが確認された。

(8). 鳥獣類が森林下層部の植物群落の構造と天然更新に及ぼす影響の解明

鳥の除去とササの刈り取りが、植食昆虫による実生の葉の食害量に及ぼす効果を調べた結果、「鳥なし区」で食害量が有意に大きく、鳥による昆虫の捕食の効果があることが分かった。また「ササあり区」で食害量が大きくなる傾向も認められ、シカの除去によって高茎・密生化してきたササの存在が鳥の侵入を妨げていることが示唆された。さらに当年生実生は2年生以上の実生に比べて、昆虫による食害に対して抵抗力が小さいことが分かった。

(9). 林床植生及び菌根に対してササが与える影響の解明

当年生実生・2年生以上の実生のそれぞれについて、翌年春まで生残していた割合を求め、ミヤコザサの地上部現存量との関係をみた。その結果、ミヤコザサ残存区の実生生存率とミヤコザサの地上部現存量との間には有意な負の関係が認められた。この理由として、ミヤコザサの被陰による影響が大きいことが予想された。 ウラジロモミの実生の菌根形成率については、シカ・ネズミの非除去区で菌根形成率がもっとも低かった。分散分析の結果では、シカ及びネズミによる効果がそれぞれ有意に認められたが、ミヤコザサの効果は認められなかった。

(10). 土壌の理化学性及び養分動態とササの相互関係の解明 (→主要成果P17)

大台ケ原の共同実験区では、試験区設定から2年4ヶ月間が経過した。この間にシカ除去区ではササの現存量が当初の4倍以上に増加し、樹木から供給されるリターフォール量の8割に相当する量となった。土壌中の水溶性イオンは処理区間の差が春は認められなかったが、秋にはササ、シカの有無による差が生じ、実生とササ間に養分の競合関係が生じていることが確かめられた。微生物バイオマスCや全窒素、全炭素の含有量には現時点では処理の影響が認められなかった。

(11). 動植物の除去が節足動物群集に与える影響の解明

シカによる森林衰退が進む大台ヶ原において、シカ、ネズミ、ササを除去した試験区および対照区で、オサムシ科昆虫を捕獲した。その多様度指数(H')は、ササ刈り区・シカ除去区・ネズミ非除去区で高く、ササ刈りによる撹乱が多様性を高め、シカによる撹乱で多様度が低くなることが示唆された。しかし、今回みられた傾向が有意なものかどうかを今後の継続調査結果によって明らかにしていかなければならない。また、シカ除去区と非除去区の土壌からツルグレン装置を用いて中型土壌動物を抽出して比較したところ、個体数はシカ除去区と非除去区双方で設置時と比較して倍近くに増加したが、除去区と非除去区の間の差はわずかであった。除去区の土壌動物群集が回復過程にあるとは今回のデータだけでは結論できず、今後の継続調査が必要であると考えられた。

(12). 野生樹木群集の有効サイズに関する保全生態学的研究

ホオノキとオオヤマレンゲについて、集団の有効サイズを求めた。ホオノキの調査地には約70ヘクタールの集水域内に86本の開花サイズに達した個体が見いだされた。これらの個体について、9つのマイクロサテライト座位における親世代と子世代の対立遺伝子頻度を求め、それぞれの遺伝子座のデータから有効サイズを推定したところ、平均値は29.6となった。これは、それぞれの個体が均等に繁殖に貢献してはいないことを反映した値といえる。オオヤマレンゲでも、集団の有効サイズは小さくなっており、集団の遺伝的多様性保持という観点からはかなり問題があることがわかった。

2. 多様な持続的林業経営と施業技術の体系化

関西地域における林業の活性化や野生生物との共生を目指し、健全かつ公益的機能に優れた森林管理技術の解明に取り組んだ。中課題(1)では、ヒノキ造成林の高齢化(400年以上)にともなう林床植物種の多様度を調査した。間伐により最初の年は花粉量の抑制があるが次年目以降は逆の可能性を示唆した。「列状間伐林の収穫予測と経営的評価」は当初予定の試験地間伐作業が遅れたため、次年度まで延長する。中課題(2)では、ナラ類集団枯損害がこれまでの日本海側から紀伊半島中部の3県境付近にまで拡大し、新たに広葉樹樹種(常緑のカシ類)で確認された。水ストレスを受けたナラ類に特に優先的にカシノナガキクイムシは加害しない、マツ材線虫病の進展につれて僅かな蒸散や土壌水分の低下でキャビテーションが発生し易い、等を明らかにした。室内放飼試験により、マツノマダラカミキリに対するサビマダラオオホソカタムシの天敵としての有効性を明らかにした。中課題(3)では、京阪神地区に多い木造3階建て新工法住宅の実態と部材供給システムを明らかにした。固定試験地における長伐期林での成長データを収集し継続調査した。

1).多様な森林地業技術の高度化

(1). 植林地の植物相

京都東山の35林分で植生調査を行った。半自然林の14林分について、出現種のタイプ分けを行ったところ、優占度がシイの優占度と正比例するもの(シイ林種)、反比例するもの(二次林種)、特に関係が認められなかったもの(中間種)の3つのタイプが認められた。シイ林種は、半自然林でもヒノキ林でも優占度に大きな違いはなかった。また、ヒノキ林の種数は林齢が100年くらいまでは増加するが、その後は減少した。ここで減るのは主に中間種で、100年を過ぎると種の選別が中間種にも及ぶものと考えられた。以上のようなことから、ヒノキ植林はシイ林種に生育の場を提供するが、二次林種を衰退させる恐れがあり、林分の高齢化にともない中間種も衰退させる恐れがあることが分かった。

(2). 列状間伐林の収穫予測と経営的評価

既存の収穫予想表と林分密度管理図をもとに、下層間伐林、列状間伐林及び無間伐林の主間伐全体の幹材積収穫量を推定して比較した。対象は近畿・中国地方のスギ・ヒノキ人工林で地位中とし、2回の間伐を経て皆伐する施業を想定した。その結果、列状間伐の場合は全層間伐になるため、間伐量および間伐木の平均サイズが下層間伐より50~90%程度大きくなると推定された。しかし、主伐収穫量について比較すると、列状間伐は下層間伐のおよそ50%にとどまった。また、主間伐合計収穫量については列状間伐は下層間伐のおよそ70%であった。また、無間伐の場合に比較しても、列状間伐は主間伐合計収穫量および平均サイズの面から劣っていると推定された。

(3). 樹冠量制御モデルによる花粉生産量の抑制技術の開発

間伐や枝打ちによるスギ花粉抑制効果を、雄花生産の生態と林間構造の解析に基づく樹冠-雄花着生モデルにより推定した。樹冠が疎開されると雄花着生する個体の割合が増大、雄花着生個体あたりの雄花量も増大し、日当たりのよくなった陰樹冠は雄花を着生することが分かった。モデルを作成して計算したところ、間伐を一度しか行わない場合、未閉鎖期間中の雄花生産はどのような間伐でも閉鎖林より多く、皆伐しないかぎり雄花生産を閉鎖林以下に減らすことは不可能であった。つまり、間伐による雄花生産抑制は間伐の年は有効であるが、2年目以降は逆効果となる可能性がある。

2). 森林の生物書管理技術の高度化

(1). 虫害情報の収集と解析

森林・苗畑・緑地などにおける昆虫による林木被害の発生動向を全国規模で把握・解析するとともに、昆虫被害の発生予察体制を確立し、虫害の管理モデルを開発することを目的とする。虫害発生情報については、支所から送付した全国統一様式の調査票によって近畿中国森林管理局及び支所管内各府県から収集した。本年度に受け取った調査票(虫害分)は17件で、前年度よりも減少した。収集された調査票の内容を全国の発生情報とともにデータベース化して、結果を「森林防疫」誌上に随時発表した。ここ数年目立っている、ナラ枯損地域の拡大、ヒノキのスギカミキリ被害、庭園、街路樹の虫害被害報告の増加が今年度も見られた。

(2). 獣害発生情報の収集と解析

本年度に受け取った調査票(鳥獣害分)は5件であった。獣害の内訳はノウサギが3件、ムササビが1件、カワウが1件であった。被害件数、面積とも前年を下回った。カワウによる被害の報告が初めてあった。

(3). 病害発生情報の収集と発生動向の解析

平成11年度に収集された病害発生情報は、4県から8件の情報が送付されてきた。平成11年度に特筆すべき出来事として、紀伊半島中部の和歌山県と奈良県、三重県の県境付近で新たな広葉樹林の枯損が確認されたことである。被害樹種には常緑のカシ類が多く含まれており、日本海側で発生しているナラ類集団枯損と被害樹種は異なっていた。しかし、被害木にはカシノナガキクイムシのマスアタックが見られ、さらに被害木からはカシノナガキクイムシとナラ菌も分離された。以上より、紀伊半島での広葉樹林の集団枯損も基本的には日本海側で発生しているナラ類の集団枯損被害と同じ原因によるものであることが推察された。

(10).萎凋に至るナラ類の細胞生理学的変化の解析

野外で枯死した被害木の道管にはチロースが発生しており、多くの道管ではナラ菌と思われる菌糸が観察された。一方、カシノナガキクイムシのアタックを受けて一部の枝だけが枯れた個体では、生き残った部分の道管中にチロースが発生して内孔を塞いでいるものの、いかなる菌糸も観察されなかった。人工的にナラ菌を接種したが枯死しなかった個体では、チロースが道管内孔全体を塞ぐようなことはなく、チロース芽の発生が見られる程度であった。さらに、いかなる菌糸も確認できなかった。

(11). ナラ類集団枯損に関連する菌類の生理学的性質の解明(→主要成果P23)

ナラ類樹木に対する病原性が疑われている糸状菌(ナラ菌と仮称する)について、最も成長に適した平板培地はPDA平板培地であった。成長適温は、菌糸成長の速さを指標とすると25~30℃であると推察された。培養温度が5℃でもナラ菌はごくゆっくりと成長するが、30℃を越えると極端に成長速度が落ち、菌株によっては死滅した。近畿北部・宮崎県産の菌株は設定した培養温度全般にわたって成長が遅かったのに対し、東北・北陸産の菌株は全体に成長が速かった。鹿児島産のものは菌株によって傾向が異なった。このことから、さらなる検討を要するものの、ナラ菌菌株の成長に対する温度の影響は産地によって異なる可能性が示唆された。

(12). ナラ類の萎凋・枯死過程における水分生理機能の解明集団

野外においてカシノナガキクイムシのアタックを受けた個体と受けなかった個体のアタック前の水ポテンシャルを比較したところ、両者で有為な差は認められなかった。つまり、カシノナガキクイムシは水ストレスを受けているナラ類に優先的にアタックするのではないことが分かった。アタック後枯死に至るナラ類の水ポテンシャルは短期間に急激に低下することが分かった。カシノナガキクイムシのアタックを受けても枯死しなかった個体からのナラ菌の分離率は枯死した個体のそれに比べて非常に低く、枯死しなかった個体ではほとんどナラ菌が繁殖していないことが分かった。

(14).森林病原菌類における系統分化及び遺伝的多様性の解析

スギ.ヒノキに暗色枝枯病を引き起こすG. cryptomeriae及びBotryosphaeria属大型胞子種の分類学的所在についてDNA解析による検討を試みた。これらの菌株および果樹病原性Botryosphaeria属菌の菌株を供試し、rDNAの部分塩基配列を決定した。さらに海外のBotryosphaeria属菌のシーケンス・データを収集して系統解析を行った結果、G. cryptomeriaeは果樹病原性及び一部の海外産Botryosphaeria属菌とともに2つのクラスターを形成したが、大型胞子種の菌株は別に単独のクラスターを形成した。この結果はG. cryptomeriaenBotryosphaeria属に属すること、大型胞子種はそれとは別のBotryosphaeria属の系統であることを支持していると考えられる。

(15). 生立木樹皮下のスギカミキリに対する寄生バチ放飼試験

スギ生立木に穿入したスギカミキリ幼虫に対するヨゴオナガコマユバチの寄生率を明らかにするため、スギカミキリ孵化幼虫を接種したスギ健全木を用いた放飼試験を行った。それぞれの材料をハチ放飼(網掛け)区、無処理区(開放)、天敵排除区(網掛けのみ)の3つに分け、6月下旬から8月下旬にかけて樹幹内のスギカミキリ生存率の変化を調べた。健全木に接種したスギカミキリ幼虫は、7月下旬以降ほとんどの個体が樹脂によって若齢の段階で死亡していた。無処理区では野外の寄生バチ個体による寄生が10%前後確認された。しかし生立木においてはハチが寄生したとしても、発育途中でスギカミキリと同様に樹脂によって死亡する確率が高いものと推察された。

(16). マツ材線虫病罹病マツの木部エンボリズム

マツノザイセンチュウを接種したクロマツ苗木のvulnerability curveから導かれたパラメータと供試木の水ポテンシャルの値を使って臨界通導モデルを当てはめた結果、マツ材線虫病の進展につれてわずかな蒸散や土壌水分の低下でキャビテーションが発生しやすくなることを明らかにした。このことが原因で、マツ材線虫病に罹病したマツは急激に水分通導機能を失うこととなる。

(17). マツノマダラカミキリの天敵サビマダラオオホソカタムシの生態と寄生能力の解明 (→主要成果P25)

サビマダラオオホソカタムシのマツノマダラカミキリ穿入丸太への放飼実験ならびに、自然分布域である岡山県内での枯死木の採集と割材調査を行った。ホソカタムシ成虫放飼の結果、供試丸太30本に穿入したマツノマダラカミキリ幼虫76頭の内、寄生を受けたのは6頭のみ(8%)であったが、孵化幼虫を放飼したところ、マダラカミキリの幼虫および蛹21頭の内12頭(57%)が寄生を受けた。岡山県で伐倒したマツ枯死樹幹を1999年5月下旬から7月上旬にかけて剥皮割材した結果、ホソカタムシの寄生率は5月下旬には3%であったが、7月上旬には15%に達した。

(18). 気候変動に伴うマツ材線虫病被害危険区域の変化予測

マツ材線虫病被害は本州の最北端地域と北海道を除いてわが国全土に拡がっているが、媒介者のマツノマダラカミキリ(以下カミキリ)の生活環が全うできない低温条件によって現状以上の拡大が抑えられている。したがって、地球温暖化に伴う気温上昇に対して、カミキリが生息可能地域の拡大という適応をすることによって、被害地域の拡大が懸念される。本課題では、二次メッシュ上での月別の平年気温の現状値と予測値、マツ林と現状被害の分布をもとに、温暖化とその季節による温暖化の程度の違いとマツ材線虫病発生との関係を解析して、マップ上で新たな被害発生の危険のある脆弱な地域を予測することを目的とする。本年度は、予測する道筋をつけるため、既存のデータをもとにこれまで提案された各種の指数の検討を行った。

(19). 関西地域のツキノワグマにおける遺伝的な特性に基づく地域個体群の判別

他の課題「西日本の大型獣類における遺伝的特性の解明」で開発されたツキノワグマのマイクロサテライトDNAを関西地域の個体群に適用し、この個体群中に分析可能な十分な多型があることを確認した。頭骨の形態学的分析よって、体サイズを反映する頭蓋基底全長と下顎長は、オスの場合、京都北部(丹後)の個体は京都南部(丹波)の個体より大きく、兵庫県産の個体に近い値を示すことが明らかになった。一方、メスではこのような地域間の違いは見られなかった。

3) 持続的林業経営方式の体系化

(3). 関西地域における収穫試験地資料を用いた長伐期林の暫定収穫予測 (→研究資料P32, P34)

篠谷山スギ人工林試験地及び滑山スギ人工林試験地の定期調査を行った。また、前年度までに調査を行った試験地の調査結果を取りまとめた。六万山スギ人工林試験地(石川県白峰村、45年生、第7回定期調査)は、収穫表との比較において、間伐率が低めでより高い密度を保ちながらも十分な直径成長を示すと同時に、加齢に伴う樹高成長の減衰が少なく、壮齢に至っても旺盛な材積成長を持続していることが分かった。新重山ヒノキ人工林試験地(広島県神石郡三和町、78年生、第12回定期調査)の平均成長量は間伐区・無間伐区とも63年生以降頭打ちではあるがなお増加傾向にあり、既製収穫表の平均成長量が30年生前後で減少に転じるのとは、まったく異なる成長経過を示していることが分かった。

(4). 木造3階建て住宅における木材使用の実態とその部材供給 (→主要成果P20)

木造3階建て住宅は、京都・大阪の大都市部において、狭い敷地でも住宅建築が可能なことなどの理由から建築が急増し、今日、地区内の木造住宅建築戸数の3割前後を占める。木造軸組の3階建て住宅には一般に、3階建て特有の部材として長尺の通し柱(9m)が1棟で4~6本程使用されており、京阪地区の場合、年間およそ2~3万本程の市場規模と見られる。ただ近年、集成材と金物接合を多用した木造3階建ての新工法が開発され、その住宅供給が拡大している。こうした新工法住宅には、品質のバラツキの大きい国産無垢材は採用されない。このため長尺通し柱(国産無垢材)の市場を確保し、高齢級人工林資源の活用を目指して、高品質・性能保証された木造3階建て住宅用部材の新たな供給システム構築が必要となっている。

(5). 里山及び都市近郊林の所有・管理実態の解明

里山・都市近郊林の持続的な管理のあり方を考える上で、自治体による地域の森林管理に向けた動きが注目される。京都府中部に位置する園部町のケースを探った。同町では平成11年6月に「園部町森林及び農地に関する管理条例」を制定した。背景には、「森林・農地の相続による分割化(略)等により、管理の出来ない所有者や不在所有者が増加しつつあり、森林・農地の粗放化につながる」ことへの危機感がある。管理要綱では「森林所有者等が立木の適正な保育・管理ができない場合、他の育林可能な者・機関に管理委託を行わなければならない」とし、森林の適正管理に向けた公的関与を明確に打ち出した。実際の運用ケースはまだないが、今後、地域森林の管理システムを構築するための重要な基盤的枠組みを与えるものとして評価される。

3. 地域森林資源管理手法と森林資源の総合的利用手法の確立

関西地域の里山ブナ林を対象に、その保全のための保護管理手法の開発を目的として、ランドスケープエコロジーに基づく森林の空間配置や、社会的環境の歴史的変容、その生態系における植物の多様性と林分の構造の解析を通じて、保護管理計画策定のためのガイドラインを明らかにした。また、里山の今後の保全のための基礎的研究として、里山の空間的実態を把握するため里山に関連する地理情報をはじめとする諸情報のデータベース構築を開始した。地域森林の炭素固定能の変動を評価するためのシミュレーションモデルの基本構造を開発した。さらに、北谷二酸化炭素動態観測施設の稼働が開始され、試験的に得られた大気二酸化炭素の観測値は十分に妥当性のあるものであった。また、里山の保全の重大要素である住民による環境認識と、変容する里山ランドスケープの相互作用を解明する新規課題を開始した。

1). 森林諸機能の総合化手法の開発

(1). ランドスケープエコロジーに基づく森林の保護管理手法の開発

近畿地方においては里山ブナ林を対象とする具体的な保全施策が行われておらず、法令に基づく保全対象地の部分的な指定と行為規制に限定されていた。このような残存状況にある里山ブナ林とその周辺のランドスケープを見ると、様々な社会的インパクトが小規模な面積単位に異なった頻度や大きさで発生していた。また里山ブナ林は、地域社会や文化と密接に結びついた長い利用の歴史があり、その生態的な特性は独自の利用、管理手法の影響を強く受けていた。保護管理においてはスケールに応じた植生・土地利用の分布と変容パターンの把握、里山ブナ林を維持してきた多様な利用・管理手法の担保、周囲の里山林まで含めたランドスケープの構造が持つ機能を、時間・空間的なつながりの中で位置づけることが不可欠であることが明らかになった。

(2). 里山複合体における空間構造の解析と地図化手法の開発

定義が未統一で曖昧な里山の概念を明らかにするために、「里山」の意味あいを様々な出典より拾い上げ整理した。その結果、既存の「里山」の定義は、地形や集落からの距離などによる地理的なもの、植生によるもの、土地利用など景観が成立する機構に着目したもの、風致的役割や住民の心理的空間把握などの社会文化的なものに分類できた。学術書や啓蒙書に、機構的、社会文化的定義を行うものが多く、一方政策書では、地理的あるいは植生的な定義が多かった。また機構的、社会文化的定義は1990年代以降に増加し、現在では主流を占めていた。また時代が新しくなるに従って、里山の範疇を森林のみでなく周辺の農地や集落を含めた複合体としてとらえる見方が増加し、里山を景観として扱うことの重要性が示唆された。

2).地域森林資源の総合的利用のための管理計画手法の開発

(2). 森林動態モデルによるCO2固定能評価手法の開発

個体ベースの森林動態シミュレーションモデルとして実績のある ZELIG version 1.0 (Urban, 1990) を基本としてシミュレーションモデルを開発した。気候条件のパラメータと樹種ごとの種特性のパラメータを入力し、出力として、樹種ごとのサイズ分布、階層別の葉面積分布、バイオマスのそれぞれの時間変化が得られる。1999年度は、FORTRANで書かれていたプログラムをC++に移植する作業を行った。あわせて、シミュレーションモデルのサブモデル部分のモジュール化、メモリ効率・実行効率の改善を行い、サンプルデータによる動作確認を行った。

(3). コナラ・ソヨゴ林における大気-森林系CO2フラックスの解明

山城水文試験地においてCO2フラックスの観測を行ったところ、着葉期のCO2フラックスは放射収支の日変化に良好に対応していた。CO2濃度の鉛直分布も上端でのフラックスの変化に対応して日変化を示していた。また落葉期に関してはCO2フラックスの絶対値が低下しており、日中の光合成量も低下していた。そのためCO2濃度も高い値を示しており、日変化の波形も着葉期と比較すると明瞭ではなかった。このようにCO2フラックスとその結果として現れるCO2濃度の鉛直分布は相互に良い対応を示しており、1999年の夏から開始された本観測において、CO2の固定量の観測が可能であることを示していると考えられた。