森林内における放射性セシウムの動態

 

林野庁や文部科学省の発表によると、2011年3月の原発事故後、放射性物質は樹木の枝葉や樹皮、地表部の落葉層に多くが付着（沈着）していました。常緑樹と落葉樹では放射性セシウムの付着の仕方が異なり、常緑樹のスギなどでは枝葉や落葉層に多く、落葉広葉樹では新葉が展開していなかったことから落葉層に多く分布していました。翌2012年の林野庁の調査によると、樹体の放射性セシウムが雨によって洗い流されたり、スギなどの常緑樹では葉が落葉して新しい葉に置き換わったり、落葉層の分解が進んだりしたため、森林内の放射性セシウムは葉、枝や落葉層から土壌の表層付近に大半が移行したことがわかりました。2013年は2012年の結果と同じような分布を示したので、森林内の放射性セシウムの移動は小さくなったことがわかりました。ただし、一部では放射性セシウムの分布がかなり異なる森林も見つかっており、森林内のセシウム分布は一様ではないこともわかってきました。 森林内の放射性セシウム分布は初期に急激に変化しましたが、全体の蓄積量はほとんど変化していませんでした。このことから、森林に沈着した放射性セシウムは森林内にとどまり、流出した量は少ないと考えられます。 放射性セシウムは森林内を循環するといわれています。そのため、林内での分布や蓄積量の変化については、いろいろな森林で長期的に調査する必要があります。

 

国内

林野庁

福島県の森林放射性物質の現状、森林からの生産物である木材、きのこなどへの放射性物質の影響について、総合的にまとめたもの。森林・林業木材産業に関する放射性物質のあらましを総合的につかむことができる。 放射性物質の現状と森林・林業の再生（一般）（外部サイトへリンク）

 

• 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（第二報）(平成23年12月27日)（一般）（外部サイトへリンク）
• 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について(平成25年3月29日)（一般）（外部サイトへリンク）
• 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について(平成26年4月1日)（一般）（外部サイトへリンク）
• 平成26年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（平成27年3月27日）（一般）（外部サイトへリンク）
• 平成27年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（平成28年3月25日）（一般）（外部サイトへリンク）
• 平成28年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（平成29年3月24日）（一般）（外部サイトへリンク）
• 平成29年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（一般）（外部サイトへリンク）
• 平成30年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（一般）（外部サイトへリンク）
• 令和元年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（一般）（外部サイトへリンク）
• 令和2年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（一般）（外部サイトへリンク）
• 令和3年度 森林内の放射性物質の分布状況調査結果について（一般）（外部サイトへリンク）
  以上11件は、福島県内3町村で継続的に調査中の森林内の放射性物質の分布状況についての調査結果。
• 樹木の放射性セシウム濃度の調査結果について（平成24年8月9日）（一般）（外部サイトへリンク）
  福島県内8箇所の立木の幹材の放射性セシウム濃度の調査結果。
• スギ雄花に含まれる放射性セシウムの濃度の調査結果について（平成24年2月8日・平成25年2月8日・平成26年1月31日・平成27年1月30日・平成28年2月1日・平成29年2月8日）（一般）（外部サイトへリンク）
  福島県等のスギ林で採取した雄花の放射性セシウム濃度の調査結果。
• 国有林火災跡地におけるモニタリング調査事業の概要（平成29年度・平成30年度・令和元年度）（一般）（外部サイトへリンク）
  福島県浪江町の国有林で発生した林野火災跡地のモニタリング調査結果。
• 福島県の国有林野内における環境放射線モニタリング調査の実施結果について（平成23年7月14日・平成24年7月30日・平成25年7月26日・平成26年7月16日・平成27年7月17日）（一般）（外部サイトへリンク）
  福島県内のレクレーションの森等の国有林野の調査結果。
• 福島県内に所在するレクリエーションの森等における空間線量率調査の実施結果について（平成28年7月15日・令和2年7月31日）（一般）（外部サイトへリンク）

環境省

• 自然公園モニタリングの測定結果について（一般）（外部サイトへリンク）
  被災地における自然公園の施設や公園内の湧水等のモニタリング結果
• 環境研究総合推進費平成25年度終了成果報告書「福島原発近隣における里山生態系を含めた除染効果の評価と住民の中期曝露評価」（外部サイトへリンク）
• 環境研究総合推進費平成26年度終了成果報告書「上流域水系ネットワークにおける森林-渓流生態系の放射性物質移動と生物濃縮の評価」（外部サイトへリンク）

原子力規制委員会

• 放射線モニタリング情報（一般）（外部サイトへリンク）
  全国および福島県の空間線量測定結果、航空機モニタリング、放射性物質の分布状況等に関する調査結果等の情報が集約されている。
• 平成26年度東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の分布データの集約及び移行モデルの開発事業成果報告書
  森林環境中等における放射性セシウムの移行状況調査（技術者）（外部サイトへリンク）

福島県

• 森林環境放射性物質モニタリング調査、放射性物質拡散防止・低減効果説明会資料（技術者・一般）（外部サイトへリンク）
  森林におけるモニタリング調査結果について、平成25年度から毎年度資料が掲載されている。

研究機関・大学・学会等

• 放射線医学総合研究所 東京電力福島第一原子力発電所事故関連情報アーカイブ（一般）（外部サイトへリンク）
• 日本原子力研究開発機構東日本大震災・福島第一原子力発電所 関連情報（一般）（外部サイトへリンク）
• 日本原子力研究開発機構 広報誌Topics福島（一般）（外部サイトへリンク）
  事故後のモニタリングや取り組み成果の概要がわかる。
• 農林水産技術会議被災地域の復旧・農林業関係の技術情報（技術者）（外部サイトへリンク）
  事故後の放射線影響に関して実施したプロジェクト研究や除染技術等が紹介されている。
• 農業環境技術研究所（技術者）
  山口ら（2012）土壌-植物系における放射性セシウムの挙動とその変動要因。 農業環境技術研究所報告. 31: 75-129（外部サイトへリンク）
  土壌-植物系のCsの移行や動態に関する解説があり、放射性物質の森林生態系での挙動の参考になる。
• 福島大学環境放射能研究所（技術者）（外部サイトへリンク）
  特に「研究活動・プロジェクト」では森林を含むプロジェクト研究の概要が紹介されている。
• 筑波大学復興・再生支援活動（技術者）（外部サイトへリンク）
  放射線対策を中心とした復興・再生支援活動の取り組みが紹介されている。
• 科学研究費補助金（新学術領域研究）福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究（技術者）（外部サイトへリンク）
  筑波大学恩田裕一教授が代表の科研費プロジェクトのHP、森林を含む陸域での移行動態研究情報の説明や研究業績の紹介など。
• 千葉大学園芸学部福島支援チーム千葉大（技術者）（外部サイトへリンク）
  福島再生プロジェクトの取り組み紹介、森林の放射能汚染に関する論文や学会発表等の閲覧も可能。
• 東北大学・災害復興新生研究機構（技術者）（外部サイトへリンク）
  事故炉廃止措置・環境修復プロジェクトとして「放射性物質によって汚染された生活環境の復旧技術の開発」および「被災動物の包括的線量評価事業」に関する研究が行われている。
• 日本土壌肥料学会原発事故・津波関連情報（一般・技術者）
  放射性Csを主とした土壌中での挙動や植物（作物）移行の事例やメカニズムについて解説されている。（外部サイトへリンク）
  森林生態系における放射性Cs動態とキノコへの移行についての解説もある。（外部サイトへリンク）
• 日本学術会議 東日本大震災への対応（技術者）（外部サイトへリンク）
  東日本大震災への対応を審議し、各種の提言、見解等の公表。放射能汚染に関しては放射能対策分科会で検討。
• 日本緑化工学会原子力災害被災地の里山の汚染対策に関するアピール（技術者）（外部サイトへリンク）
  日本緑化工学会として取り組むべき森林や里山の除染についてのアピール。

（以下は木材、特用林産にも重複掲載）

• 福島県林業研究センター（技術者）（外部サイトへリンク）
  放射線関連研究の情報（研究成果発表会資料や成果報告等）が閲覧可能。
• 東京大学農学生命科学研究科の復興支援プロジェクト（技術者）（外部サイトへリンク）
  特に「放射能の農畜産物等への影響についての研究報告会」の資料が重要。農業関係の研究が対象であるが、植物への放射性物質の移行、果樹の汚染など、木材の汚染を考える際に参考になる。

農林水産省農林水産技術会議事務局

• プロジェクト研究成果シリーズ525「農地・森林等の放射性物質の除去・低減技術の開発」（技術者）（外部サイトへリンク）
  常緑針葉樹林と落葉広葉樹林における落葉・落枝、堆積有機物層・土壌層の放射性セシウム量の変化に関する調査結果。（11～17ページ）
• プロジェクト研究成果シリーズ553「農地等の放射性物質の除去・低減技術の開発」（技術者）（外部サイトへリンク）
  常緑針葉樹林と落葉広葉樹林における放射性セシウム移動、落葉層の放射性セシウムの存在形態、土壌中の放射性セシウム動態に関する調査結果。（63～67、83～86ページ）

海外

• Fukushima Nuclear Accident（外部サイトへリンク）
  福島原発事故に関するIAEAの情報が総合的に集約されている
• UNSCEAR(国連大気放射線影響科学委員会）（技術者）（外部サイトへリンク）
  国連傘下の放射線影響に関する機関。福島事故報告をはじめ、生物や環境影響に関する報告が掲載されている。
• IAEA（国際原子力機関）（技術者）
  Modelling the Migration and Accumulation of Radionuclides in Forest Ecosystems. Report of the Forest Working Group of the Biosphere.Modelling and Assessment (BIOMASS) Programme (Theme 3).（外部サイトへリンク）
  チェルノブイリ事故により放出された放射性物質の森林における変化モデル。
  （以下木材、特用林産にも重複掲載）
  
  Environmental Consequences of the Chernobyl Accident and their Remediation: Twenty Years of Experience.（外部サイトへリンク）
  チェルノブイリ事故後の動態と除染についての説明。チェルノブイリ原発事故による環境への影響とその修復 20年の経験
  日本語版が日本学術会議から公表（外部サイトへリンク）