研究紹介 > 特集一覧 > 2015年の特集一覧 > 特集:オガサワラヒメミズナギドリ ~謎の海鳥の発見と、この鳥の未来~
更新日:2015年9月1日
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ミズナギドリ類は特徴的な鳴き声を持っています。夜間調査では声を頼りに探索します
オガサワラヒメミズナギドリの動画(35秒)(MOVファイル:45.0MB)(動画を見るには、動画再生ソフトが必要な場合があります)
小笠原諸島では、過去約20年のあいだに正体不明の海鳥が6羽見つかっていました。2012年、DNA分析によりこれらがブライアンズ・シアウォーターという鳥だと判明しました。この鳥は過去に2回しか記録がなく、すでに絶滅の可能性も心配されていた世界的な希少種です。
(写真1:小笠原自然文化研究所)
小笠原で見つかった6羽は保護個体と死亡個体で、健全な野生個体はいませんでした。しかも3羽は、外来種のネズミに捕食された死体でした。果たして、この鳥はまだ小笠原に生き残っているのでしょうか。
(写真2:死亡個体の遺骸)
この鳥にはオガサワラヒメミズナギドリという和名がつけられました。しかし、生態も個体数も分布も全くわからないため、この鳥を探して無人島での調査を繰り返しました。
(写真3:調査の様子 小笠原自然文化研究所)
2015年3月、父島列島の東島で野生のオガサワラヒメミズナギドリが見つかりました。わずか28haの小さな島ですが、4種の海鳥が繁殖する有数の繁殖地でした。
(写真4:発見したオガサワラヒメミズナギドリ)
捕獲した個体は、各部を計測し、足環をつけて放鳥しました。ミズナギドリとしては短めの翼、青い脚、黒い下尾筒(尾の下の羽毛)などの特徴があります。
(写真5:捕獲した個体。小笠原自然文化研究所)
見つかったのは、低木林と草原の混じった環境でした。これは、小笠原の海岸林の典型的な環境です。
(写真6:生息地の様子)
この島では少なくとも10個体が見つかり、そのうち4羽が捕獲されました。巣も1箇所見つかり、確かにこの島に生き残っていたことがわかりました。
(写真7:生息地での調査)
巣は、オガサワラススキの群落の中にありました。地面に掘った小さな穴の中で卵を抱いていました。
(写真8:巣も見つけた)
東島では、南米原産の外来植物ギンネムが分布を拡大し、在来の環境が減っています。このため、林野庁により外来植物駆除が行われています。
(写真9:繁茂する外来植物・ギンネム)
また、この島では多数の小型海鳥がクマネズミに捕食されたため、2008年から環境省によりネズミ駆除事業が行われました。オガサワラヒメミズナギドリがこの島に生き残れたのは、そのおかげです。
(写真10:外来ネズミもいる)
見つかったとはいえ、わずか10個体。小笠原での絶滅は、世界からの絶滅を意味します。
地元の島民や行政機関とともに、私たちはこの鳥を守り続けます。
(写真:小笠原自然文化研究所)
本州から南に約1000kmにある亜熱帯の島々。他の陸地とつながったことのない海洋島で、多くの貴重な固有種が生息しています。今なお進行中の進化の過程が見られる生態系の価値が認められ、2011年に世界自然遺産に登録されました。
英名 Bryan’s Shearwater、学名 Puffinus bryani。
体長27cm〜30cm、翼開長55〜60cm、体重130〜150g。小笠原での発見に基づき、世界自然保護連合、環境省、東京都の各レッドリストで、最も絶滅の危険性が高い絶滅危惧IA類に指定されました。
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