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生物間相互作用ネットワークのモニタリング調査に基づいて、シカ個体数やササ現存量の管理が森林生態系の動態に及ぼす効果を予測できるシミュレーション・モデルを構築し、シカとササの密度を同時に調整することが最適手法であることを明らかにした。
多くの森林樹木には、マスティングとよばれる種子の「成り年」現象がある。温帯落葉広葉樹林での地道な長期観測結果から、マスティングには種子食者から上手く逃れたり、受粉効率を上げるなど、樹木の種子生産戦略上の特別な利点があることがわかった。
外来樹種アカギの生活史を推移行列モデルによって構成したところ、個体群サイズは年3.5%の高い割合で増加することがわかった。生活史段階の分析から、胸高直径5cm未満の個体を抑制することが、個体群の抑制対策としてもっとも効果的であると考えられた。
三宅島の火山灰堆積地における土壌侵食の危険度を森林被害状況や現地侵食実験等により図化した。土壌侵食を防止するには硬い火山灰層を破砕して、緑化植物を導入することが望ましいと考えられた。
1980年以降、日本海側の広い範囲で猛威を振るっているナラ類集団枯損の原因は、カシノナガキクイムシによって運ばれる新種の病原菌によって引き起こされた萎凋病害であることを明らかにした。
森林を共有資源として利用あるいは保全活動を行う場合、住民に一連の管理・利用を委ねることが効果的である。その際、Iターン者の発想と行動力及び昔からの住民との連携が大きな推進力になりうることを明らかにした。
森林・林業に関わる地域特性の因果関係を調べるため既存統計資料による計量的分析を行い、森林施業の実施水準が地域の林業依存度と過疎度および森林資源の成熟度のそれぞれと関連することを明らかにした。
インドネシア大規模森林火災(1997〜1998)の被害地東カリマンタン州ブキット・バンキライを調査し、火災が森林の微気象、菌類、昆虫類に与えた影響と火災後の回復状態を明らかにした。
環境ホルモン作用をもつダイオキシン類は、農林生態系に生息する野生動物の食物連鎖を通じて、高次捕食者で高濃度に蓄積されることや、ダイオキシン類の環境中での分布と挙動の特性を明らかにした。
高頻度に地球観測を行っている衛星データから、地表の観測にとって障害となる雲・その他の影響を軽減し、植生の緑のようすや積雪、表面温度などの季節変化を時系列的に長期に捉える手法を開発した。
緊急ブレーキ付きの刈払機を開発し、操作性を従来型の刈払機と比較した結果、新装置の付加にともなう重量増は作業効率や操作性に影響なく、安全性を向上させる実用性が示された。
カメラ映像上の対象物に照射したレーザーの輝点位置を3次元座標で自動認識する装置を開発し、野外においても林業機械の自動化に必須となる作業機到達範囲(2〜10m)で1cm以内の精度を有する位置情報を得た。
ドングリを食料として利用するアカネズミに、タンニン含有量の多いドングリだけを餌として与えると体重が減少したり死亡する例があり、ドングリは本来ネズミにとって有害であることが明らかになった。
里山のブナ林を維持したいという意識と森林の機能への期待について、地域住民と都市住民のアンケートから違いを明らかにし、関係者間の意識の相違をふまえ、共通の認識として里山保全計画に反映させることの重要性を示した。
アレルゲン遺伝子の単離、安定な遺伝子導入技術や効率の良い個体再生技術を確立し、アレルゲンフリーの組換えスギを創出する突破口を開いた。また、単離したアレルゲン遺伝子は安全なペプチド療法やDNAワクチンの開発、新たな機能性食品の開発に利用され、スギ花粉症克服に役立つ。
市販シイタケの品種・系統を判別するために、RAPD指標データベースの整備やDNA分析のプライマーを開発して系統判別技術を実用化することで、最近の輸入シイタケの品種・系統を明らかにした。
キトサンはセルロースと酷似した構造で、カニやエビの殻から誘導される天然多糖類で知られる。本研究はキトサンから調整した膜をパーベーパレーション法に適用して水とアンモニアの分離に成功し、その荷電性による分離機構を明らかにした。
木質系廃棄物を化学変換し有用化合物を調製する手法として「加溶媒分解システム」を提唱した。当システムでは、廃棄物中のセルロース成分を徹底的に分解し、有用化合物・レブリン酸に変換する点を特徴としている。
木材への試薬注入をより効果的に行えるようにするため、超臨界二酸化炭素で木材を抽出処理した。その結果、超臨界二酸化炭素処理したスギ心材は、未処理材と比較して約6倍の浸透性を示し、浸透性が大幅に向上することを明らかにした。
地下鉄工事や都市再開発によって発掘された出土木材から、江戸時代における木材利用の変遷を調査した。時代が進むにつれて樹種や木製品の種類が多様化し、木材流通が海外を含め広範に行われていったことが伺える。
原木丸太の段階で、生産される製材品や集成材ラミナなどの品質をあらかじめ予測できれば、合理的で経済的な木材利用が可能になる。強度値として重要なヤング係数について、スギ材でこれを可能とする方法を開発した。
ポプラから単離した遺伝子がタンパク質をリン酸化する酵素を支配し、葉への障害で発現が誘導されることが明らかになった。これより、この酵素はストレスなどの情報を受け取り、細胞内の情報伝達の引き金として機能することが示唆された。
マツタケで発見した2種類の動くDNA因子—レトロエレメント—の構造などを解析した結果、これらの因子は動く遺伝子としての構造及びRNA由来を示唆する構造を各々保持しており、染色体上に広く分布していることが明らかになった。
スクリーニングにより選抜した担子菌であるウスヒラタケのダイオキシン分解能を各種の培地において解析した。さらに、ウスヒラタケを土壌中で生育させる条件及び生育した菌を特異的に定量する技術を開発した。
JIRCAS世界食料モデルを基礎にした世界林産物需給モデルを開発した。モデルにいくつかのシナリオを与え、世界の森林蓄積量、産業用丸太生産量の長期見通しをおこなった。
熱帯降雨林は生物多様性が高いといわれている。本文はインドネシアの狭い調査地のカミキリムシ種数が世界各地の広範な国、地域と比較しても遜色ないことを示し、熱帯降雨林の生物多様性の高さを具体的に紹介する。
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