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更新日:2022年3月11日
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樹木に張り付いている複数のイセリアカイガラムシ
和文
イセリアカイガラムシ(カメムシ目ワタフキカイガラムシ科)
Iceryapurchasi
イセリアカイガラムシはオーストラリア原産のカイガラムシの一種で、カンキツ類の害虫として有名ですが、様々な種類の樹木を加害するため、苗木などの移動に伴い、世界の多くの場所に分布を広げています。
雌成虫は長さ5-6mmの楕円形で、赤みを帯びていますが、体表から分泌したロウ物質に覆われています。自分の足で移動することができますが、針状の口を植物に深く挿入して汁を吸います。成熟した雌成虫の体の後半部は白くて縦筋が入りますが、腹面に卵嚢が作られて、それを包むロウ物質が分泌されたものです。なお、雄成虫は翅があり、雌成虫と交尾して有性生殖しますが、めったに出現しません。多くの場合は雌単独で繁殖して、年に3回ほど繁殖を繰り返します。
アメリカでは19世紀後半に本種によるカンキツ類の被害が深刻になりましたが、捕食性天敵であるベダリアテントウをオーストラリアから導入することによって本種の駆除に成功しました。我が国でも明治時代に本種が侵入しましたが、アメリカの事例に倣って国の事業としてベダリアテントウを導入したことにより、イセリアカイガラムシの密度を抑制することができました。
現在ではイセリアカイガラムシ、ベダリアテントウとも各地に普通に生息しており、イセリアカイガラムシによる大きな被害はみられなくなりました。四国地域でも両種とも野外に生息しています。
写真・文佐藤重穂2020年6月2日森林総合研究所四国支所(高知県高知市朝倉西町)にて撮影
英文
Iceriascaleinsect
Iceryapurchasi
(Hemiptera:Margarodidae)
Kochi,Japan
2Jun.2020
(photobyS.Sato)
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