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更新日:2023年5月8日
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ウンモンチク
PhyllostachysnigraMunrof.boryanaMakino
四国支所構内にある樹木園でウンモンチク(雲紋竹)というタケが花をつけているのを見つけました。イネやトウモロコシの花にそっくりで、タケがイネ科タケ亜科に分類される植物であることを思い出させます。このウンモンチクは、モウソウチクやマダケとともに食用、道具の素材として植栽されているハチク(淡竹)の一品種で、その分類には高知県佐川町出身の牧野富太郎博士が関わっていることが学名からうかがえます。
折しも森林総合研究所関西支所から、ハチクの開花を全国的に追跡し、実態把握を目指す研究者が来ていたので話を聞きました。
「タケの開花は珍しいという話はよく聞きますが、どのくらいの間隔で開花するのでしょう?」
「一世紀に一度、このハチクの仲間はおよそ120年に一度のタイミングで一斉開花し、その生涯を終えます。一昨年から昨年に一斉開花したようですね。開花した竹稈の枝の一部にいくつかの花が新たについています。こうした咲き方はハチクでよく見られ、専門用語で「再開花」と呼ばれます。ここ10年ほどは四国を含めた日本各地で開花が観察できるでしょう。」
「人間界がコロナ禍で自粛が続いている間に一斉開花していたのですか。120年前というと前回の開花は1900年頃、明治後期に入ったところということですね。ところでタケはタケノコで拡がっていく植物ですが、開花もまた次世代を作る手段ですか?」
「せっかく開花しても種子をほとんどつけることができず、一部生き残った地下茎によって全滅を避け、そこから次第に回復する(かもしれない)という奇妙な繫殖様式をもつことがわかってきています。」
「なるほど、まだまだ不思議なことが多い植物ですね。開花期はこれからでしょうか。」
「ハチクの場合は一般に晩春~初夏が開花期です。これから四国でも『一生に一度出会えるかどうか』といわれるハチクの開花を目撃することができるかもしれません。」
なお、竹林景観ネットワークという団体のHPで「タケ類の開花情報」のページを設けて開花情報を集めているとのことです。情報をお持ちのかたはぜひ御寄せください。
2023年3月28日森林総合研究所四国支所(高知市朝倉西町)にて撮影
(写真と文:伊藤武治、協力:小林慧人(関西支所))
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